キャリバー-Happy temperature-
第九十八話
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広がっているのは一面全てが氷の世界――初めてこの《ヨツンヘイム》に来たメンバーから、その幻想的な光景に思わず感嘆の声が漏れていく。
その間に妖精となっていたユイを肩に乗せたリーファが、落ちるギリギリまで近づくと、《ヨツンヘイム》中に響き渡らんというような声をあげる――それに気づいた俺とリズは、お互いにさっと耳をふさぐ。
「トンキー――!」
「トンキーさーん!」
そんな近くにいたレコンの鼓膜を破壊しかねない大声が功を労したのか、《ヨツンヘイム》の天空から友人がその姿を現した。象水母型邪神のトンキーは、久しぶりの再会を喜ぶようにリーファに近づいていた。
「うわっ!」
……十二分に気持ちは分かるが、トンキーの姿を見たタルケンの情けない悲鳴が響く。俺にリズ……ついでにレコンも恐らく、トンキーと友人になったところに居合わせていなければ、きっと同じリアクションを取っていただろう。
「シリカ、準備いいか? ……シリカ?」
「あ、ははいキリトさん! 大丈夫です!」
《ヨツンヘイム》の美しさから、トンキーのショックで言葉を失っていた一人であるシリカも、何とかキリトの一言で自分を取り戻す。シリカはポケットから、ピナより遥かに小さな竜――まさしくポケットサイズの竜を取り出すと、その竜についていたテープを剥がす。
「今日はよろしく頼みますね!」
すると、ポケットサイズだった竜はみるみると大きくなり、最終的にはトンキーとほぼ同じサイズまで成長する。ダンジョンに侵入出来ないモンスター用の、テイムモンスターを小型化させるケットシーのスキルということらしい。地上から飛竜を使えばいい的だが、ここは既に上空。トンキーがいれば攻撃してこないタイプの、トンキーの仲間たちのタイプ以外はいないため、安全にメンバーを運ぶことが出来る。
「トンキーもシリカのこれも人数制限があるから、別れて乗ってくれ」
キリトはそう言い残すと、よっからせとトンキーに乗っていく……本当ならみんな、我先にとシリカの飛竜に乗ろうとするところだが、それはとても笑顔でトンキーに乗っているリーファに、トンキーを気持ち悪がっているようで悪い気持ちとなる。各々が良心の呵責に耐えられなくなっていると、シリカとピナは運転手として飛竜に乗り込んでいき――メンバーの非難の視線を浴びる。
「あ、アスナはさ! どっちに乗るの?」
その空気に耐えられなくなったユウキが、無理に明るく振る舞いながらアスナへと問いかける。しかし既にトンキーを見慣れていたアスナは、当然のようにユウキにトドメを差した。
「もちろんトンキーの方よ? キリトくんにリーファちゃんも、もう乗ってるし」
ここでアスナが飛竜と言ってくれれば――じゃあボクもアスナと一緒
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