キャリバー-Happy temperature-
第九十八話
[1/10]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
《エクスキャリバー》発見の知らせは、すぐさまALO中に響き渡った。邪神たちが闊歩するヨツンヘイム、そこのあるクエストのクリア報酬として渡される――という情報が流れ、プレイヤーたちはこぞってヨツンヘイムへと乗りだした。邪神たちになすすべもなくやられるプレイヤーも少なくなかったが、一部のプレイヤーは着実にエクスキャリバー入手へと歩を進めていた。
一方、旧ALOにおいて一足先に《エクスキャリバー》の場所を掴んでいたものの、ダンジョンの難易度の高さから入手はしていなかった俺たちは。ヨツンヘイムに行ったプレイヤーたちが条件を満たす前に、直接ダンジョンに乗り込むことを選んでいた。
「クラインの武器終わり! あいつ使い方荒い!」
イグドラシル・シティの一等地、リズベット武具店にて、店主の怒声が工房中に響き渡っていく。時は年末、師走も終わりを告げようとしている暇な日に、俺たちは《エクスキャリバー》が待つダンジョンアタックを予定した。
気心が知れたメンバーに出来るだけ声をかけ、パーティーをダンジョンアタックの準備――それはすなわち、レプラコーンにおいてのもう一つの戦場に他ならない。
「レコンくんの短剣、出来たよ」
「レインありがと! ほらタルケン早くする!」
「はははは、はい!」
先日知り合ったレプラコーンの少女のレイン、スリーピング・ナイツのタルケンにも協力を頼み、リズの指揮のもとメンバーの武器の手入れをしていく。それぞれ十人十色の武器たち――特にキリトやルクスの二刀、シノンの弓、クラインのカタナに、細く鋭くカスタマイズされたユウキの剣などは曲者だ。てんてこ舞いな現場に慌てるタルケンとは対照的に、レインは落ち着いて作業をこなしていた。
「リーファも案外武器使い荒いよなぁ……ところでレイン。随分慣れてるけど、どこかで店でも?」
武器使いが荒い、などと人のことは言えないことを呟きながら、レインに気になっていたことを聞く。いつもより人手が多いとで、喋ることくらいの少しの余裕はあった。
「え? ま、まあそうかな。客商売は慣れてる」
レコンの短剣の次はルクスの片手剣を手入れしているレインから、微妙に口ごもった返答が返ってくる。わざわざ問いただすような真似はしないが、こちらの不思議そうな顔がレインに伝わったらしい。
「なんで慣れてるかは秘密。ほら、レインちゃん謎の女? みたいな」
「はい、喋る余裕あるみたいだから追加ね?」
謎の女的なポーズを取っていたレインの前に、容赦なくリズの手により新たに武器の山が積まれた。パーティーメンバーたちの武器だけではなく、今のうちに片付けておかなくてはならない武器たちだ。……何せ《エクスキャリバー》発見の報のおかげで、店は随分と繁盛して嬉しい
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ