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第一章
やらないか
飯田孝太郎と聡美夫婦の隣の部屋にだ。奇妙な二人が引っ越してきた。
「男の人が二人なんだ」
「ええ、そうなの」
聡美は夕食の時にこう夫である孝太郎に話すのだった。
「男の人がね」
「僕達みたいに夫婦じゃなくて」
「そうよ。二人よ」
その垂れ目の大きな目を見せながら話す聡美だった。背はあまり高くなく声は高い。髪は肩までで縮れ気味だ。その彼女が夫に話すのだ。
孝太郎は面長で背が高くすらりとしている。額がやや広いが見事な黒髪に太く一直線の眉、そして切れ長の二重の奇麗な光を放つ目をしている。如何にも真面目そうな顔立ちをしている。
その彼がだ。妻の話を聞いているのだ。
「二人なのよ、男の人が」
「兄弟かな」
まずはこう考えた孝太郎だった。
「それって」
「そう思う?」
「うん、違うかな」
「やっぱりそうかしら」
妻は首を捻りながら夫に述べた。
「それって」
「だって男の人が二人だよね」
孝太郎が話すのはこのことだった。
「じゃあ普通に」
「兄弟よね」
「そうだろ?まあおかしな人達じゃないんだよね」
「御二人共凄く礼儀正しくて真面目な人達みたい」
こう話す聡美だった。
「御一人はお医者さんで」
「ドクターなんだ」
「もう一人の方は喫茶店を経営しているらしいわ」
「ふうん、そうなんだ」
「実は今日その喫茶店に行ってみたのよ」
聡美はお茶が好きだ。それで喫茶店にはよく行くのだ。喫茶店巡りが趣味でもあるのだ。
「そうしたら白くて女性向けの奇麗なお店でね」
「奇麗なんだ」
「ローズティーが凄く多くて。美味しかったわ」
「まともな人達なんだね」
「暴力団とかそういう人達じゃないのは確かよ」
それはだというのだ。
「だから別にね」
「気にすることはないんだね」
「そうよ。気にしないで」
「わかったよ。それじゃあ」
妻の言葉に素直に頷く孝太郎だった。とりあえずは隣人に対して安心した。しかしである。
隣人達と朝の出社の時や休日に挨拶を交えさせたりしているうちにだ。彼はあることに気付いたのだった。それはだ。
どうも兄弟にしては異様に親密なのだ。常に一緒にいてべたべたとしている。それにお互いに甘い声で囁き合ったりしているのだ。
そうしたものを見てだ。孝太郎は聡美に話した。妻が射れた紅茶をリビングで飲みながらだ。ダージリンティーである。
「あのさ」
最初はここから切り出した。
「御隣さんだけれど」
「どうしたの?」
「若しかしてだよ」
こう前置きしてから妻に話すのだった。
「まさか。あれなんじゃ」
「暴力団関係者とか?」
「いや、そうじゃなくて」
「そうじゃなかったら何なのよ」
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