物語
【短編2】地球が何回まわったとき?
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しれない。
親のお使いとは言え、あの先生に見つかると目をつけられて厄介だな、と思いながらも、
母親に怒られるのも同じくらい嫌だったので、先生に会いませんように、と学校帰りに商店街に向かった。
その望み通り、その日先生に会うことは無かった。
ホッと胸を撫で下ろす一方、少し不思議だった。
今日現れないにしても、明日以降の日付をいつも教えてくれていたからだ。
なんでだろう、と思いながらもその日を終えた。
その翌日、先生が死んだことを知らされた。
居眠り運転で交差点に突っ込んできたトラックに轢かれたらしい。
詳しいことはわからないが、それはいつもの見回りとして商店街へ向かう夕方の話だったらしい。
先生は商店街に来られるはずがなかったのだ。
ケイタ君は本当に「わからなかった」のだ。
それから、僕はケイタ君に問いかけるのをやめた。
もし、問いかけて「わからない」と言われてしまったら、と考えると・・・。
◆
「え、なんで、わからないって言われたらダメなんですか?」
私は首を捻って先輩に尋ねる。
「そんなんだから、君は小学生なんだよ。よく考えてごらん」
さっきまでの不機嫌はどこへ行ったのか、先輩は鼻歌混じりで紙にペンを走らせ始めた。
逆に私は、また小学生扱いされたことでイラっとしていた。
どうやら、どこへ行ったのかと思っていた先輩の不機嫌は、私の元に来ていたようだ。
私がなんて言い返そうかと言葉を選んでいたとき、何かを思い出したように先輩が口を開いた。
「そういえば、君、前貸した100円返してよ」
その言葉に苛立ちがすっと引くのを感じた。
先輩、覚えてたのか。
「か、借りましたっけ?」
「貸したよ。財布忘れたから、って」
そう言いながら、右手を私のほうへ差し出し、手のひらをグーパーグーパーと動かしている。
今月は友人とスイーツ食べ歩きツアーを敢行したしたことから、今は100円ですら惜しい。
「やだなぁ、いつ借りたんですか。何月?何日?何時?何分?何秒?地球が何回回ったとき?」
「6月10日12時11分56秒地球が1兆6790億73万5755回まわったときだよ」
先輩は間髪を入れずそう答えた。
・・・先輩、覚えてたのか。
雨はまだ降り続きそうだ。
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