2部分:第二章
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第二章
自分自身にだ。こう言い聞かせるのだった。
「もう俺はハゲじゃないんだ。高校に入れば」
髪の毛を伸ばそうと決意した。何しろ昔の話なので中学校まで全員丸坊主だった。髪を伸ばせるのは高校生からという時代であった。
それでだった。彼は遂にそのハゲが消えてだ。晴れて高校生になってだ。髪を伸ばした。もう彼をハゲと呼ぶ者はいなくなった。
そして髪の伸ばし方は当時流行っていた長髪だ。そのうえ面倒臭いので髪を洗うのはおっくうになりおまけにアメリカから入ったハンバーガー、鳴り物入りでやって来たマクドナルドを貪りインスタントラーメンを食べる。高校から大学までそうしたライフを満喫して青春を過ごした。
社会人になってからもそれからもだった。彼脂っこいものを好んで食べ風呂ではいい加減に烏の行水をしていった。結婚して父親になってからもそれを続けていった。その彼が子供が結婚する時にはだ。
見るも無惨に肥満してだ。しかも髪の毛はだ。
完璧なバーコードだった。髪と髪の間からてかてかとした光が見えている。その有様はかつての首相と比べてもさらに気の毒なものだった。その彼はだ。長年連れ添っている妻やその結婚する子供にだ。自嘲と共に言うのであった。
「子供の頃の十円ハゲが消えて喜んでいたら最後はこうなるからなあ」
その頭を擦りながらの言葉だった。十円ハゲどころかもっと酷い有様になってしまった。ハゲの行く先はハゲであった。それが彼の人生なのだった。
十円ハゲ 完
2011・4・13
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