2部分:第二章
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第二章
「御前これからテレビ出る時は鬘を被れ」
「鬘をですか」
「それと眉も細くしろ」
眉毛もだというのだ。細くしろというのだ。
「わかったな。そうしろ」
「それってやっぱり」
「言わなくてもわかるな」
社長は多くを言わなかった。ここまで言えば充分わかるだろう、彼に対して言外で実にはっきりと告げたのである。もっと言えばそうしろと言うことで告げたのである。
こうしてだ。彼はだ。
本当に鬘を被り眉を細く剃ってだ。そうしてテレビに出るようになった。誰もその彼を見て何故そうしたのか言わなかったし聞かなかった。まさに言わなくてもわかることだったからである。
その状況が大統領就任から続いた。だがこの大統領は世論の評判の悪さを察してなのかそれとも最初から国家への奉仕を念頭に置いていて権力欲がなかったのか。一期だけで次の選挙には出ずにだ。大統領職から退いたのだった。こうして後任者が選挙に出て大統領になった。もっとも次の大統領も軍人出身ということでそれを根拠に世論から叩かれたが。
そしてだ。このコメディアンもである。
大統領が交代するとだ。こう社長に言われたのだ。
「もう鬘取っていいからな」
「眉毛は」
「言わなくてもわかるな」
「そういうことですね」
「ああ、そういうことだ」
これでだ。話は終わったのだった。彼は鬘を取り眉毛を元に戻した。そしてそのことにやはり誰も何も言わず聞きもしなかった。そんな話である。実際にある国であったことである。
禁じられたもの 完
2011・4・20
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