舐め終わってから
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ての反論だった。
「飴舐めて歯磨きって。どうやってするのよ」
「とにかくどっちかにしなさい」
あくまでこう言って引かない母だった。この辺り実に強い。やはり母は強しである。
「いいわね」
「ちぇっ、じゃあどうしろっていうのよ」
「どっちかにしなさい」
飴を舐めながら反論する娘への反論への反論だった。
「どっちかにね」
「どっちかにって」
「それでどうするのよ」
母の問いはこれまで以上に決断を迫るものだった。かなり強い口調になっている。
「あんた。どうするのよ」
「ううん、そうね」
まだ飴を舐めている。それは終わりそうにない。裕美子は進退窮まった。
風呂か歯磨きか、それが問題だった。とりあえず飴を舐め続けることは許されそうにもなかった。それで遂に進退窮まったのである。果たしてどちらにすべきか、まだ風呂の方が飴を舐め続けられるのではないか、ふとこう考えた。そしてそう考えるとであった。
彼女はそちらに傾いた。そうしてだ。
母に対してだ。こう言うのであった。
「わかったわ。じゃあね」
「どっちにするの?」
「ここは」
言おうとした。しかしであった。
そこで飴がだ。舐め続けていてかなり小さくなってしまった、先程よりもさらに小さくなってしまったそれがだ。喉の中に落ちてしまったのだった。
そうなってしまってだ。裕美子はだ。
拍子抜けした声でだ。母にこう言った。
「今ね」
「今?どうしたの?」
「飴玉飲み込んじゃった」
こう言ったのである。確かに飲み込んだ形になる。
「どうしよう」
「どうしようって。飲んだのよね」
「うん、飲んじゃった」
「じゃあどっちにするの?」
母親はそれなばらだとだ。裕美子に対して問うてきた。拍子抜けした感じの娘の言葉とはだ。全く違っていた。
「ええと、とりあえずお風呂かな」
「お風呂にするのね」
「飴。なくなったから」
それでだというのだ。その懸念材料となってしまっている飴がなくなってしまえばだ。彼女にしてもだった。
どちらかを選ぶしかない。そうしてであった。
彼女はお風呂を選んだ。そのうえでお風呂場に向かいまずは服を脱ぐのだった。
その服を脱ぎながら。考えることといえば。
「お風呂からあがったら。今度はメロンのにしようかな」
お風呂からあがっても飴を舐めようと考えていたのだ。それから歯を磨こうと思っていた。何につけてもだ。彼女はまず飴ありきりだった。そんな女の子だったのである。
舐め終わってから 完
2011・4・14
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