第二百四十三話 信長の読みその六
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「この姫路の傍じゃな」
「ここのですか」
「そうなる、敵は今度は攻めてきてじゃ」
そうしてというのだ。
「姫路を奪い取り我等を滅ぼそうとしてくる」
「それ故に」
「ここのすぐ傍まで来るわ」
「そしてその敵をですか」
「我等は迎え撃つことになる」
「と、いいますと」
ここまで聞いてだ、信長はその目を鋭くさせて言った。
「一ノ谷でしょうか」
「次の戦の場はか」
「そこでしょうか」
「そうやも知れぬな」
信長は嫡子の言葉を否定せずにこう返した。
「この姫路から近い、それにじゃ」
「先の戦の場は屋島でした」
「ならばな」
「その次はです」
「一ノ谷でも不思議はないな」
「そう思います故」
「源平の戦では先に一ノ谷じゃった」
そこで義経の奇襲に敗れた平家と屋島で再び戦ってまた源氏が勝った、そうして平家は壇ノ浦まで逃れていったのだ。
「その順序は逆でもな」
「やはりです」
「そうじゃな、そもそも何故屋島や一ノ谷で戦になったか」
その源平の時にだ。
「どちらも戦になるべくしてなった場所じゃ」
「当時の要地であったが故に」
「屋島は水軍を動かしやすい」
「そして一ノ谷も」
「当時は都の傍じゃった」
平家が遷都させた福原だ、平家はそこを拠点として戦っていたのだ。
「しかも今はこの姫路のすぐ傍じゃ」
「ならば」
「福原に突然出るか」
信長はその目を鋭くさせて言った。
「そうして大阪と姫路の道を絶ってな」
「そのうえで、ですか」
「我等を乱しつつ姫路を狙い」
「我等を滅ぼさんとしてきますか」
「そう来るか、ならじゃ」
「どうされますか、ここは」
「奴等がそう来るなら考えがある」
信長はその目を鋭くさせて言った。
「一旦大坂に戻るとしよう」
「姫路を捨てられるのですか」
「奴等はどちらを狙っておる」
信長は信忠に問うた。
「わしと姫路。どちらをじゃ」
「父上です」
すぐにだ、信忠は父に答えた。
「それは」
「そうじゃな、わしじゃな」
「はい、何といっても」
「ならわかるな」
「父上が姫路を留守にされても」
「姫路よりわしを狙う」
「姫路を奪い敵の拠点にしませぬか」
ここでだ、信忠はあえて信長にこう問うた。
「そうしてきませぬか」
「この城をじゃな」
「父上を狙わずに」
「ここには五万の兵と竹千代を置く」
「竹千代殿をですか」
「これで陥とすのに四十万の軍勢でも一月はかかる」
堅城に五万の兵に家康を置けばというのだ。
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