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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十一話 真相(その1)
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り、カストロプ公爵家が肥るだけ。頼られたマリーンドルフ伯爵は誠実な方でね、キュンメル男爵の頼みを受けたのは良いけど、どうすれば良いか困惑した。それで私の父に相談したのよ」

「男爵夫人の御父上とマリーンドルフ伯爵は親しかったのですか」
「そうね。二人は共通の悩みを持っていて愚痴を言い合う仲だったわ」
「共通の悩み?」
「父もマリーンドルフ伯爵も男子に恵まれなくてね。判るでしょう?」

「相談を受けた父はコンラート・ヴァレンシュタインをマリーンドルフ伯爵に紹介したの。コンラートは有能だったわ。キュンメル家の財産を守る傍ら、領内を見て周り経営を改善したの。そのためキュンメル家の財産は増え豊かになった。でもその事はよりカストロプ公の欲心を刺激する事になってしまった。そしてあの事件が起きた」
リメス男爵家の騒動を隠れ蓑にキュンメル男爵家の財産を狙ったと言う事か。

「しかし、それだけではカストロプ公の犯行とは断言できないのではありませんか」
「コンラートが死んだ直後、カストロプ公がキュンメル家の財産の横領を図ったの。でもそれは阻まれた。コンラートが生前、自分の死後のことを委託した弁護士たちによってね。彼らはルーゲ司法尚書に近い人たちで司法尚書を動かす事で、カストロプ公を牽制したのよ。弁護士たちが言っていたそうよ。あの動きは偶然じゃないって。マリーンドルフ伯爵が父にそう言っていたわ」

「コンラートの奥方はヘレーネと言ってね、司法書士の資格を持っていたの。夫婦で一緒に仕事をしていたのだけどやさしそうな女性で二人とも本当に幸せそうだった。息子のエーリッヒが自慢で、良く言っていたわ。”大きくなったら弁護士に成って一緒に仕事をしたいと言ってくれている。将来が楽しみだ。体が弱いのが心配だが正義感も強いし、心が強い。いい弁護士に成るだろう” って。私たちがあの家族の幸せを奪ってしまった」

私には男爵夫人を慰める事が出来ない。どれほど違うと言ったところで男爵夫人が納得する事は無いだろう。
「父とマリーンドルフ伯爵がその事で話しているのを見てしまったの。二人とも真っ青だった。カストロプ公があんな事までするとは思わなかったのね。父にとっても、マリーンドルフ伯爵にとってもコンラートは身分に関係なく信頼できる友人だった。

葬儀の時、エーリッヒを見たわ。まだ小さくてこれからどうするのかと思った。父にうちで引き取ろうと言ったの。父も同じ思いだったのね、賛成してくれた。カストロプ公を刺激してもまずいからという事で半年ほど経ってからと思っていたんだけど、その時には彼は士官学校に入っていた」

私はヴァレンシュタイン准将の事を考えていた。一体どんな気持ちで士官学校に入ったのだろう。彼は私たち以上に貴族を、皇帝を憎んでいるじゃないだろうか。彼がラインハルト
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