第40話 将軍、逃亡
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俯く原田に土方は原田を見つめ、厳しくも優しい声で言った。
「そ、それが、私も本当に信じられないのです」
今まで聞いた事ない土方の声に涙を詰まらせ原田は答えた。
ただならぬ、原田の様子を見て近藤と土方は息をのんだ。
「慶喜公が大阪城を抜け、江戸に戻ったとの事です」
原田はそういい終わると泣き崩れた。
「そ、そんな馬鹿な・・・・・・・」
近藤の目の前が真っ白になった。
(幕府軍の総大将が敵前逃亡だと!!では、幕府のために戦った我らはなんだったのだ)
近藤もまた膝が折れそうになり、その場で泣き叫び衝動が全身を駆け巡った。が、それを繋ぎとめたのが土方だった。
「原田、慶喜公、逃亡は本当の事なのか?」
土方は近藤の肩をぐっと握り原田に言った。
「いえ、聞いただけのはなしです。が、会津藩の松平容保様の手引きとの事と言う噂です」
土方もその場で崩れ落ちそうになった。何故なら、会津藩が手引きしたという事に。
(松平容保、俺はあんたを信用していたんだがな)
魔人・岡田以蔵退治に協力してくれた恩義もあった。が、まさかの将軍逃亡を手引きするとは。
確かに大阪で将軍討死ともなれば幕府はその場で終わる。が、幕府に協力した諸国の者たち。そして、我ら新撰組の事をどう思っているのか。
そう思うと怒りが込み上げてくる。
「近藤さん、俺はまず、それが事実なのか確認してくる」
土方は近藤と原田を置いて大阪城天守閣に向かおうと歩き出した。
「としさん!!」
近藤の叫びが土方の歩みを止めた。
「としさん、それは俺がやる」
近藤の歩みは力強かった。
「近藤さん」
近藤の呼びかけに立ち止った土方を近藤は追い抜いて行った。
「としよ、原田が言った事が本当なんか嘘なのかとしても、お前さんは、急ぎ先に江戸に向かえ」
近藤は立ち止り土方に振り向くことなく告げた。
「近藤さん、何を言ってるんだ。俺も行くぞ」
土方は歩きはじめとうとした。
「駄目だ。来るんじゃない!!」
近藤の怒声に土方はひるんだ。あまり、聴かない近藤の怒声だった。
「としよ、この現状が偽りであったなら、急ぎ慶喜公、容保殿両名を引き連れ江戸に向かおう。そして、共再び戦おうぞ。が、これが本当ならば、慶喜公の真意をお前が聞くのだ」
近藤は土方に振り向きにっこりとほほ笑んだ。
「近藤さん・・・・・・」
土方はそれ以上声に出すことができなかった。
「いいな、副長・土方歳三。これは、新撰組局長・近藤勇の命である。いそぎ、隊を編成し江戸へ迎え」
近藤の姿はまさに威風堂々。新撰組局長の姿だった。
「解りました。新撰組副長・土方歳三、局長の命に従います」
土方はくるりと近藤に背を向け走り出した。
(としさん、お前はお前の誠を貫いていけ。俺も
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