第3章 リーザス陥落
第80話 裏切りの母国
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瞼の裏に 光が差すのが判る。
そして、温かみも同時に感じられる。そこから、夜が明け光に包まれているのだろうか? と何処かで思えたが、全身を包み込んでくれる温もりは、太陽の光とは、また違う何かを感じられた。それを確認したかった、……だが、異常なまでに瞼が重く、開く事が出来なかった。それは、瞼を縫い付けられているのではないか? と思える程だった。身体の節々にも鈍い痛みがあるのを感じ、まるで動けなかった。
動けなかったのだが、感じる温もりが……、まるで 身体を癒してくれているかの様に、痛みを拭ってくれていた。それでも瞼を開ける事は叶わなかったが……。
無限にすら感じる時間。浮遊しているかの様に感じていた時間。
軈て、包んでいた温もりが身体から離れていくのを感じた。
「―――ぅ……」
そして、声が聞こえてきた。
光の中で、何かを呼ぶような声。
「ゆ―――ッ」
軈て、声の距離がどんどん近くなる。
その内容も、距離が近くなるにつれて、はっきりと判る様になってきた。それに追従する様に、縫い付けられていたのが嘘の様に、緩やかに開く事が出来た。
「………っ」
「ゆぅ……!」
目の前にいるのは……。
「しづ、か」
「そ、そう。わたし、わたし、だよ……っ も、もう……しんぱい、しんぱい、かけて……」
目の前にいるのは、志津香だった。
いつも強気で、気丈に振る舞う少女の両眼には 涙が溢れていて、朱く染まっている。目を腫らしている様子が見て取れる。
「どう、した……? いつもの、志津香じゃない、な……」
「ば、ばかっ! だから……ゆぅが、しんぱいを、かけるから……っ」
「はは……。そう、だったな」
ユーリは、ゆっくりと身体を起こした。
先程まで感じていた感覚。全身を、身体の中を まるで棘付きの虫が這いずり回っているかの様に、続く痛みがまるで無くなっていた。
力の代償は、覚悟をしていた筈なのだが、普通に動く分には、問題は無さそうだ。そして、普通に 戦う分にも、恐らく大丈夫だろう。
――……今回は貸しだ。
もう 全てを思い出す事は出来ない。泡のように消えていき、朧げになってしまっているが、確かに頭の中に残る声の内容。
彼が 力を貸してくれたのだろう、と判った。そして、志津香が……。
「ありがとう。志津香。……守ってくれた、な」
「っ……」
志津香は、ユーリのその言葉を訊いて僅かに俯く。顔を直視する事が出来ない。
間違いなく、顔が赤くなってしまっているから。――それが、止められないから。顔を見たら尚更だ。熱源をずっと目の前に当てられているも同然だから
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