暁 〜小説投稿サイト〜
ランス 〜another story〜
第3章 リーザス陥落
第80話 裏切りの母国
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ていた。
 信頼出来る友達を失う。その苦しみは彼女もよく知っている。特に、トーマは 親友だと言っていい彼女を看取った男だから。……信頼、の二文字では表せられない程、の関係なのだから。

 そして、更に確信がいった。トーマと言う 人類最強の称号を冠している豪の男を退けた解放軍側に、あの男(・・・)がいる、と言う事を。

「何をしているのだ! トーマのヤツ……!!」

 トーマが死んだ訳ではない、と言う事を訊いて、多少ほっとしたのは、パットンも同じだったが、それ以上に憤慨が湧き出ていた。握る拳にも力が過剰に入る。
 トーマの実力は十分すぎる程、知っているのだ。だから、負けるはずが無い、とさえ思っていた。……つまり、本気でやらなかった、と パットンは判断したのだ。

「………ッ!! ノス、ノスは! どうした! 魔人どもは、何をしている!!」

 声を上げ、周囲を見渡すが、そこにはローブに包まれた老魔人の存在はなかった。

「ぐ、ぐぬぬ……! この大事な時に……!!」
「い、いかがなさいますか…… 解放軍との兵力差も……」

 伝令兵の不用意な一言に、パットンの両眼がかっと見開かれた。

「解放軍だと!? なんだ、その呼称は! 敵はリーザスの残党に過ぎんだろうが!!」
「は、ははっ!! 申し訳ございません!」

 声を荒らげ、多少なり発散できたのだろうか、パットンは 肩で息をしつつ、冷静に頭を使う事が出来た。

「……とにかく、トーマには無理に仕掛けるな、と言っておけ。本国からの援軍を待って行動を……」
「援軍、だって?」

 パットンの指示を訊いて、ハンティがそれを遮った。

「パットン、お前…… そんなものを当てにしてたの?」
「……どういう事だ、ハンティ。転送魔法陣で、援軍を送れ、と親父に使いも出した筈だぞ!」
「………………」

 ハンティの沈黙は、深く……そして、重いものだった。
 それを見たパットンは 表情を更に強ばせた。

「何故、何故黙るんだ…… ま、まさか……届いていない、と言うのか……?」

 本来の快活な気性とは裏腹に、ハンティは躊躇い、そして口篭ってしまう。だが、それでもパットンの縋る様な視線には耐えかねたのだろうか、ゆっくりと口を開いた。

「……きやしないよ。援軍なんて」
「な…………!?」

 その形のない、落雷に撃たれて、パットンの頭の中は真っ白になった。その一撃は、修行時代、ハンティに撃たれた雷よりも遥かに、内部に撃ちつけるものだった。

 だが、それを認めたくないのだろう。パットンは声を荒らげた。

「ッ、ど、どういう事だ! バラオ山脈を超える好機だろうが!」

 そう、リーザスの豊かな国土は 厳しい気候のヘルマンにとって、長年欲し
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