第3章 リーザス陥落
第80話 裏切りの母国
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こそ、主がこの世に誕生したのだ。主、そして その父。――それも異常とも言える。その奇跡が 三度も続くとは思えん。
声は 続く。
この声の主は、いつも心配をしてくれている。口調は、高尚……悪く言えば遥か彼方、天よりも高い所から、見下ろしているイメージさえ感じる。
だが、その真意は……誰よりも優しいのだ。この声は、その事実を決して認めないだろうけれど、彼には感じる。それだけで良いと思った。
だから、何を言われても、最後には判ってくれる事は 何処か、自分でも判っていた。
「……そう、オレは変わらない。これまでも、そして、これからも……、な」
思いの全てをぶつけても、受け止めてくれるから。
「確かに、思う所はあった。優先順位を 自分のなかでも作ろうとしていた。――だが、オレには、もう無理だ。あの日、カスタムで 全てを見たあの時。そして、妹と母を救おうとした、あの時」
思い返す。混濁をし、沈んでいると言うのに、この声が聞こえる時は、はっきりと鮮明に浮かぶ。それは、悲しい記憶でもあるが、自分の中での戒めとしているのだ。
――……もう、二度と失わない為に。
「――オレは、命を捨てる気はない。だが、それでも 失うくらいなら、何度でも命を賭ける。――……命を使う事で 守れるなら、躊躇わない」
今、浮かび上がるのは、志津香の姿だった。
彼女は、忘れ形見だ。
自分にとってのもう1人の父親と母親。その娘。
兄妹だといえば、きっと志津香は怒るだろう。『自分の方が姉だ!』と、彼女は怒るだろう。だから、兄妹とは少し違う。姉弟とも違う。別に子供ではないから、どちらでも良い。と思うが、志津香もそれも認めない、と何処かで思った。
だが、それでも家族だ。
……だから、想っているのは間違いなかった。彼女を見る目が、他の者達とは違う事も、自覚している。贔屓をしている訳ではない。
例え、あの場所にいたのが、他の仲間、誰であっても、恐らく自分は同じ行動を取ったと思う。
……人外である魔人と、圧倒的な実力を持つ魔人と、相対している姿を見れば……仕方がない。
志津香は 魔人を相手にして、傷つき、それでも戦い続けている。その姿を見て、ユーリは 奮い立った。
『我を呼ぶ事はもう出来ないと心得よ』
そう、言われた言葉も 全て忘却の彼方だった。
魔人サテラと相対した時の様な力。あの力を全て使う事は叶わなかった、が。それでも 限りなく近い力を、神威の力を身の内に宿した。全面全てを見に任せる神威は、その力は勿論 身体能力も向上する。
いや、向上、などとは言えない。
強
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