第3章 黄昏のノクターン 2022/12
35話 陰と闇の狂騒曲
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そんなところだろうね。気楽に掛かるとしよう」
第一層で見たボス部屋の二枚扉とは造りも大きさも隔たりがあるものの、実感する精神的なプレッシャーという意味では大差ないだろう。強いて異なる点を挙げるならば、レイドの大多数がNPCであるという点か。何れにせよ、この奥に敵がいることは変わりない。自分達の命を最優先に、戦うしか出来ない。
コルネリオによって扉も開かれ、その奥に広がる空間が露になる。
陸地と水面が切り分けられた広大な空間。ロモロ邸でも見られた造船に用いる資材や道具も散見されるそこは、このダンジョンにおける中枢である《造船区画》であった。
木箱を材料にしたことで長方形に近いフォルムの筏じみた形状になってはいるが、それでも頑強な印象を受ける。そして、問題はその船の数であろう。七艘の筏の列が無数に連なる船団の威容は、そこに兵を満載した際の脅威を考慮すればヨフェル城の規模から鑑みて、雪崩れ込む兵力が勝ることは想像に難くない。放置すれば、この層に駐屯する黒エルフはもれなく鏖殺されることだろう。
そして、俺達が区画内の全貌を視認すると同時に、フォールンエルフもまた俺達を認識することとなる。本来ならば居る筈のない人族の大部隊を前に動揺しつつも抜き身の曲刀を構え、こちらを包囲するように布陣を整える。しかし、時代劇やハリウッド映画のように大挙して押し寄せるというものではなく、《三人二列の小隊》が一糸乱れることなく瞬時に構成されたのだ。その小隊も五隊の横並びが二列組まれ、統率された組織であることが窺える。
………そして、その大部隊の最奥からゆったりと現れたのは、革鎧ばかりのフォールンには珍しい金属と革の複合鎧を纏った長身痩躯の男だ。彼等のシンボルとも言える覆面は二本の角が生え、深紅のマントは明らかに周囲の兵隊とは一線を画する存在であると視覚的にも訴えてくる。外見でさえも厳しいそのフォールンエルフは、レベルを探ろうとした俺に更なる驚愕を齎すこととなる。
「………なんだ、あの色は?」
「黒いんだけど、気のせい………じゃないわよね?」
クーネの希望的観測に肯定してやりたいところであるが、生憎と夢でも幻影でも蜃気楼でもない。
そのレベル差に応じて色彩の濃淡を変え、敵としての脅威を報せるカラーカーソルは赤を通り越して既に黒い。血錆を思わせるカラーカーソルを持つ存在は、紛う事なき敵対者として眼前に存在しているのだ。
【N,ltzahh:Fallen Elven General】
何と読むのかは判然としないまでも、将軍の肩書が示す通りの高ステータスであることは最早議論するべくもない。ティルネルが度々恐れていた存在は、恐らく彼である事も間違いないだろう。
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