第3章 黄昏のノクターン 2022/12
35話 陰と闇の狂騒曲
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た報告書を基に判断するならば、奥へ向かう通路があるのだったね。そちらへ出向けば、話をつけられる相手への御目通りが叶うことだろう」
それはつまり、ここのフォールンエルフを統括する存在ということになるのだが、ティルネルの情報を重ねて判断すれば、その統括者たる某かが圧倒的な戦闘能力を有していることとなるだろう。仮にティルネルを含む他のエルフと同様に、その某かも上層から降りて来たというのであれば、逆説的に考察して《フォールンエルフはこの層以外にも存在する》と言えるだろう。これが肝入りの作戦という以上は、ここで彼等を阻止できなければ他の層から増員を集めてでも作戦を決行することだって考え得る。
つまり、ティルネルの姉を救うには、何が何でも彼等をこの層からご退場願わねばならないということになるのだが、その困難は如何なるものか、想像に難い。
そんな心配を余所に、船頭を大型ゴンドラの簡易テント内に隠れさせたコルネリオは最奥へ、木箱が山積みになっている倉庫へと部下を率いて歩み出した。数的な面ではこの上なく心強いのだが、やはり高レベルなモンスターがどこかに潜んでいると思うと穏やかではない。誰にも死んでほしくないというティルネルの願いはどこまで実現できるかは運によるところも大きいが、こればかりは成り行きに委ねるほかない。最悪はプレイヤーの撤退も視野に入れねばならず、その事はクーネ達も理解していることだろう。
いろいろな事で覚悟を強いられながら、細い丁字路を警戒しつつ倉庫側へと淀みなく進行する。哨戒兵の乏しさは昨日の潜入と同様であるが、裏を返せば敵の懐に兵力が集中しているとも判断できる。恐らくはコルネリオもそれを認識してか、自陣の兵力の消耗を極力避けるような立ち回りが窺える。
話が通じないと判断してか、その行動は完全に戦闘前提のものへと切り替わっているが、彼等のカラーカーソルを直に視認した俺でも判断はほぼ同様だ。ティルネルのように友好的Mobに転身するモンスター自体がそもそも希少なのだから。
「さて、ここが君達の報告書にて確認できる《敵陣の最奥》なのだが、あの扉はなんだろうか………気にならないかい?」
「まあ、忙しそうな音はしているな」
そしていよいよ倉庫に到達する。木箱は既に運び出されてその姿はなく、代わりに広大な空間だけがぽっかりと拓かれている。
倉庫の奥、大きな二枚扉からは槌のリズミカルで重層的なな音が響く。明らかに造船作業によるものであるし、確実に扉の向こう側に何者かがいる証左となろう。悪戯っぽい台詞とは裏腹に表情を鋭くしたコルネリオは腰のホルダーから再び《朔》を鞘ごと抜いて臨戦態勢を取ると、無言で一つ頷く。
――――あの奥へ行く、ということか。
「いよいよ、決着がつくか」
「まあ、
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