第3章 黄昏のノクターン 2022/12
35話 陰と闇の狂騒曲
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ズミのようにされるのが関の山だろうか。渦中の船頭も、自分に逃走が叶うだけの業を持ち合わせていないことを悟っているようで、泣く泣く命令に従ってゴンドラを停泊させる。
聞くに忍びない船頭の嗚咽が水音に混じって聞こえるものの、まだ動き出すには早い。今にも飛び出しそうになるヒヨリの襟首を掴んで拘束しながら成り行きを見守っていると、事態は速やかに動きだした。
船から降りた船頭を三人の部下に任せた小隊長は桟橋を進み、ゴンドラの甲板に飛び乗って、積載された荷を確認せんとした。当然、不自然に中央部分が口を開けた異質な空間を探ろうと覗き込むが、しかしその仔細を認識できたかは不明である。
フォールンが空洞を覗き込むと同時、篝火が僅かに見せた漆黒の残像を認識できなければ、俺も何が起こったかはついぞ判然としないままだったかも知れない。しかしそれは、コルネリオが放った一閃であったと認識するに余りある鮮烈さを持っていた。
そして無音の刃は、接近していたフォールンエルフの小隊長の頸を、恐ろしいほど鮮やかに捉えていたのだ。
僅かにぐらついた小隊長の身体を、何の感慨も感じさせないほど単調な動作で脇へ押し退け、船から追い落とす。水面を割って沈んでいった彼は、跡形もなく消え去って浮上してくる様子はない。僅かに水中から漏れた青い輝きが、彼の最後の主張だったのかも知れない。
しかし、自身の直属の上役が容易く害されても、船頭を包囲する弓兵はぼんやりと立ち尽くすのみだ。俺は篝火をスクリーンにしたことが幸いしてコルネリオの一撃を認識できたが、光源のない薄闇に鎖された視界においては、コルネリオの斬撃を認識することは困難極まる。あまつさえ小隊長の最期を大型ゴンドラに遮られて視認出来ないのであったならば、彼等に現状を把握する材料はあっただろうか。
「済まないが、彼を解放してやってくれないか。さもなくば………」
小隊長を撃破して間もなく、コルネリオが桟橋に降りて弓兵に語り掛ける。しかし、その末尾まで言い終えるのを待たずして、弓兵は用心に番えていた矢を以て狙撃を敢行する。状況を認識せずとも《コルネリオが招かれざる客であった》ことは雑兵の彼等でさえ理解できたのだろう。ソードスキル――――《弓術》スキルは攻撃用のスキルなれど、やはり弓の技能であるそれへの表現には違和感を覚えるが――――特有のライトエフェクトのない通常攻撃である三本の矢がコルネリオに殺到する。咄嗟の判断と決断力から察するに、彼等は非常に優秀な兵士であったのだろう。
ただし、その抵抗が有効に作用されるかは全く別の話であった。三本の矢のうち一本を《朔》で砕き、残りの二本は遥か後方の岩壁に衝突して小さな金属音を空しく打ち鳴らす。
――――回避された。
その事実を認めて二撃目に繋げるべきと瞬時に
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