第3章 黄昏のノクターン 2022/12
35話 陰と闇の狂騒曲
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を他者に委ねることに対する不安も、そんな状況を容認せざるを得ない不甲斐無さも、当人にしか知り得ない心痛だ。俺にその一端を計り知る方法はないだろうが、ただ任せきりにしたとは、俺は思わない。
「やるだけのことはやったんだ。少なくとも、何もしないよりかは悪くならないだろう」
「そんな、無責任な………」
「無責任じゃない。フォールンエルフの戦闘時の行動パターンを手に入れて、状態異常に対する対策も用意した。加えて奇襲だ。何も準備していない相手方と比べれば、その差は比べるべくもないと思うがな。………ほら、もうダンジョンに入るぞ」
覚悟の決まらないティルネルに喝を入れるが如く、絹越しに瀑布がしとどに打ち付ける。重量を頭や肩に受けつつ、絹の表面を流れていく水は川面に落ちる。生じた水たまりもヒヨリが下から押し上げて零し、洞の中に巡らされた水路を進むと、記憶に新しい半円の船着き場に到着する。陸地に立つフォールンエルフの見張りがざわめきつつも先行するゴンドラを桟橋に誘導した。しかし、接岸をさせる事はなく、周囲のエルフとは装備の意匠を画するフォールンエルフの小隊長が歩み出る。
「人族よ、何故此処を訪れた。取引は先日終わったはずだが?」
「へい……ですが……」
腰に提げた曲刀に手を掛けつつ訝しむリーダー格に、船頭はまごつきながらも言葉を探る。木箱と帆布で拵えたテント、船頭から見て間近に佇むのは《朔》を肩に掛けて腰を下ろすコルネリオである。剣客もかくやとばかりに堂に入った待機姿勢はさることながら、一言でも損じれば船の乗員が減ることなど想像に難くない。ましてや船頭は、その渦中にいるのだから、声が怯えていることに誰が責められようか。
しかし、言葉に詰まってしまった船頭はいよいよ視線が泳ぎ出してしまい、フォールンエルフはその警戒をより一層強める。この状況に満を持して、コルネリオは《朔》の鐺で船頭の爪先を突いて何かを伝えると、船頭は顔を青く染めながらもようやく口を開いた。
「じ、実は……こちらに納品が遅れた木箱が残っておりやして………今からでも届けて来いって上からの命令でして………」
「検品は済ませた。数に相違はないと、貴様も確認しただろう」
「うぐ、だから、上からでして……」
「………今から二分以内に接岸し、両手を頭の後ろに組んで桟橋に降りろ。事の真偽は、荷を確認した後に問うとしよう。指示に従わない場合は敵対勢力を見做し、攻撃する」
いよいよ桟橋に待機する小隊長格であろうフォールンエルフが剣を抜き、彼を取り巻くエルフが矢を弓に番えた。弓兵は三名。如何に操舵に優れた船頭とはいえ、エルフの狙撃を掻い潜って水没ダンジョンを脱することは至難の業であろう。いや、この船着き場の中でサボテンかハリネ
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