暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第3章 黄昏のノクターン  2022/12
35話 陰と闇の狂騒曲
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警備体制に変化がないとも限らない。コルネリオに油断は無縁な存在にも思えるが、その采配が吉と出るか凶と出るかは俺でも判断が付かない。運に委ねるとしよう。


「それと、フォールンは船を大量に造っているのだったね。彼等は何を狙っているか、君達は何か知っているかい?」
「現状は未だ船材という形でしょうけれど、その船はカレス・オーへと引き渡され、リュースラの拠点を攻め込むために使われるでしょう。その混乱に乗じて、フォールンエルフは《秘鍵》を………自らの目的を果たすつもりなのです」


 それについて返答をしようとするも、ティルネルが先んじて答える。
 コルネリオに自分の仲間の危機を直に伝えるタイミングなど、今の一瞬を除けば巡っては来なかっただろう。コルネリオは手で口許を覆い、思案に耽るように視線を落とすこと数秒。一つ頷いて答えを導き出した。


「………なるほど、話が見えてきた。二つの勢力に関しては干渉するつもりはないが、我々を虚仮にしておいて思い通りに事が運ぼうなどとは、全く思い上がったものだよ。ついでに伸びきった鼻も圧し折ってやるとしよう」
「………えっと、つまり………?」
「次の演目までのお楽しみだ。退屈はさせないとだけ言っておこうか」


 コルネリオが劇や演目といったような例えを使うときは、血腥(ちなまぐさ)いオチが付き物のようにしか思えないのだが、それでもティルネルの懸念には協力的に動いてくれそうだ。彼は友人という存在を大切にする。その認識だけは誤りではないだろう。だからこそ、任せていいと心から思えた。

 そんな頼もしいボスも大型ゴンドラに乗り、木箱で作った壁と布の屋根という簡素なカモフラージュに身を隠す。水運ギルドの船頭が船を漕ぎ出すのを確認し、俺達もまた指示通りに《絹》を被って後方から随伴することとする。昨日の追跡のようにゴンドラを連結させていないこともあって、操舵は極めて容易だ。ともすれば先行する大型ゴンドラを追い抜かしてしまいそうになるものの、制動しつつ堪え、努めて低速を維持しながら航行する。

 やがて大型ゴンドラはロービアを南門から抜け、レクステリウムを交戦した森を通り過ぎる。徐々に目的地に迫る景色の流れは、透き通った絹から確認できる。猶予が刻一刻と過ぎ去ってゆく様を否応無しに思い知らされるが、溜息一つで事態が好転することなど在り得ない。ありのままを受け入れるしかないのであろう。ダンジョンの入口である滝も迫ってきたことで、募る焦燥感も返って気にならなくなってしまう。あくまでも、俺の主観であるが。


「あの滝をくぐった先がフォールンエルフの本拠地だ」
「………あの、リンさん………やっぱり………」


 対して、ティルネルは滝が迫るにつれて不安の色をより強めてゆく。
 自分の姉の運命
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