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歌集「春雪花」
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 春思ふ

  雨の降りにし

   冬暮れの

 流れし雲に

    君ぞ問いける



 微かに春を匂わせる冬の暮れに降る雨…空を見上げれば、どこまでも雨雲が覆っている…。

 雨を落としながら流れゆく雲…どこへゆくのか見当もつかないが、彼のことを知りはしないかと…無駄なことを尋ねた…。

 答えなど返る訳もない問いは、ただ…雨音に掻き消されて霧散するだけ…。



 翼なく

  叶わぬ恋ぞ

   はばたけぬ

 心ぞ空し

     晩冬の雨



 鳥のように翼があったなら…無論、直ぐにでも彼の元へ行きたい…。

 だが…翼なぞありようもなく、私は一人雨の降り頻る空を眺める…。

 雨雲に覆われた空は薄暗く、心まで沈んでしまうものだ…。
 この叶わぬ彼への想いも、空へとはばたくことなく…ただただ虚しいだけ…。

 春を感じる雨だと言うのに…私は侘しいだけとは、何とも淋しいことだ…。




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