2部分:第二章
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だった。
「じゃあ先生」
「有り難う」
その消しゴムを使おうと思ったのだった。
だがここで急に気が変わったのだった。自分の小さな消しゴムに目がいったのだ。それであらためて彼に対して告げたのである。
「いや、待ってくれ」
「どうしました?」
「まだ少し残っているからね」
彼は自分の消しゴムを手に取ったのだった。今自分の机の上にある消しゴムをだ。
「これを使うよ」
「それをですか」
「ものを粗末にしてはいけないからね」
実はものは大切にしようという考えが結構ある元義だった。アシスタント時代に貧乏で何かと苦労してきた経験もそこにはあるのだが。
「だから。ここはこの小さいのを使うさ」
「そうですか。それじゃあ」
アシスタントはそれを受けて今は引っ込むのだった。
「そういうことで」
「これで終わりだったかな」
彼はふとここで言った。
「終わりって?」
「いや、消しゴムかけてこのページは終わりだったよな」
彼が言うのはこのことであった。漫画のことだったのだ。
「確か」
「確かそうでしたね」
アシスタントも今の彼の言葉に頷いて答えた。
「まだページはありますけれど」
「ページはいつもと変わらないよな」
ふと首を捻ってきた。
「今週も」
「そうですよ、いつもと同じページ数ですけれど」
「それにしては疲れるな」
時間が何度も戻っていることに気付いていないのだった。
「何でだ?特にこのページなんか」
「そのページがどうかしましたか?」
「何度もやり直している気がするな」
首を捻りつつそのページに消しゴムをかけていた。
「どういうわけかな」
「気のせいじゃないですかね」
アシスタントは特に考えることなくこう彼に答えた。
「それは」
「そうかな、やっぱり」
「時間は戻れませんよ」
少なくとも彼等はこう思っていた。普通はそうだからだ。
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