暁 〜小説投稿サイト〜
IS インフィニット・ストラトス〜普通と平和を目指した果てに…………〜
number-35
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
輪は、毎日束が磨いていることを窺わせる。
 磨く必要がないことを嬉しく思う半面、少し残念に思いながらも束に指輪を返す。


「束、左手を出してくれないか?」


 不思議そうな表情をして左手を差し出す束。
 蓮は上に向いていた手のひらを下に向けて、薬指に指輪を通した。それが何を意味しているかは言うまでもないだろう。束が異常なまでに向けてきた好意が実った瞬間である。


「え、えっ、こ、これって……」
「声が震えてる。……そうだよ。これからの大きなことが終わったら、俺と結婚しよう。だからそれはその約束みたいな――――」


 蓮の言葉は最後まで続かなかった。目元に涙を浮かべた束が勢い良く蓮に抱きつき、それを支えきれずに倒れたからだ。声にならない悲鳴を上げて喜ぶ束。なされるがままになる蓮。


 これには純粋な束に対する好意のほかに、もう一つ打算があった。
 こうしてくれれば束は自分のもとからは離れないというものだ。
 これから自分たちがやることは犯罪行為であり、そんな枠組みで表せないほどに――――。


「れんくん」
「……何だ?」
「私は絶対に何があってもれんくんのもとから離れないよ」


 ――――!
 見破られていた。自分が思っていることを寸分の狂いなく。


「まったく、敵わないなあ」
「ふふっ」


 ◯


「そう言えば、どうしてお嬢様はあの方のことが好きなのですか?」
「ふええっ!? ……突然すぎるよー」
「いえ、ふと気になったものですから」
「ふーん、そうだなあ……あれはもう十年以上も前なのかなあ」
「あ、いえ、別に過去話に回想はしなくていいです」
「ええー、仕方ないなあ。蓮はね、私を守ってくれたんだよ。まだ何も力がなくて無力だった私をね」


 そう言う彼女の表情は、虚から見ても見惚れてしまうほど綺麗だった。





[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ