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IS インフィニット・ストラトス〜普通と平和を目指した果てに…………〜
number-35
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輪は、毎日束が磨いていることを窺わせる。
磨く必要がないことを嬉しく思う半面、少し残念に思いながらも束に指輪を返す。
「束、左手を出してくれないか?」
不思議そうな表情をして左手を差し出す束。
蓮は上に向いていた手のひらを下に向けて、薬指に指輪を通した。それが何を意味しているかは言うまでもないだろう。束が異常なまでに向けてきた好意が実った瞬間である。
「え、えっ、こ、これって……」
「声が震えてる。……そうだよ。これからの大きなことが終わったら、俺と結婚しよう。だからそれはその約束みたいな――――」
蓮の言葉は最後まで続かなかった。目元に涙を浮かべた束が勢い良く蓮に抱きつき、それを支えきれずに倒れたからだ。声にならない悲鳴を上げて喜ぶ束。なされるがままになる蓮。
これには純粋な束に対する好意のほかに、もう一つ打算があった。
こうしてくれれば束は自分のもとからは離れないというものだ。
これから自分たちがやることは犯罪行為であり、そんな枠組みで表せないほどに――――。
「れんくん」
「……何だ?」
「私は絶対に何があってもれんくんのもとから離れないよ」
――――!
見破られていた。自分が思っていることを寸分の狂いなく。
「まったく、敵わないなあ」
「ふふっ」
◯
「そう言えば、どうしてお嬢様はあの方のことが好きなのですか?」
「ふええっ!? ……突然すぎるよー」
「いえ、ふと気になったものですから」
「ふーん、そうだなあ……あれはもう十年以上も前なのかなあ」
「あ、いえ、別に過去話に回想はしなくていいです」
「ええー、仕方ないなあ。蓮はね、私を守ってくれたんだよ。まだ何も力がなくて無力だった私をね」
そう言う彼女の表情は、虚から見ても見惚れてしまうほど綺麗だった。
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