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赤い帽子
4部分:第四章
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答える。
「それにわかりませんか?」
「何がだね」
「今にも来ますよ、その相手が」
 彼は周囲を見ることなく述べてきた。
「もうすぐ」
「何故そう言えるのかね、また急に」
「気配です」
 男の返答はこうであった。
「気配が。この殺気に満ちた気配が何よりの証拠です」
「そういえばだ」
 署長はその言葉に応えるかのようにふと怪訝な顔になった。それと共に顔を顰めさせて言うのであった。
「何か急に生臭くなってきたな」
「確かに」
 副署長もここで気付いた。
「この匂いは。血ですか」
「それが何よりの証拠です」
 男は副署長の言葉に頷くと共に懐に手を入れた。
「来ます。そう」
 剣呑な鋭い声で言う。
「今にも」
「今にも」
「ええ、ほら」
 男の目が鋭くなっていた。彼は明らかに何かを感じていた。そうしてその感じた先をその鋭くなった目で見ている。そこにいるのがわかっているかのように。
「伏せて下さい」
 署長と副署長に対して告げた。
「すぐに。いいですね」
「!?うむ」
「わかった」
 二人はそれに頷くとすぐに伏せた。それと共に二人の頭の上を何かが通り過ぎた。
「今のは一体!?」
「何なのかね」
「その犯人です」
 男だけが立っていた。どうやら今のでは彼は何ともないようであった。その証拠に二人の上から聞こえる声は確かなものであった。
「やはりここで来ましたか」
「今のがか」
「はい」
 署長の言葉に応える。
「詳しいことは後で。また来ます」
 そう言うと懐に入れていた手を取り出した。そこには銃があった。
「これで。終わらせます」
「拳銃でかね」
「ただの拳銃ではありません」
 伏せたままの副署長に答える。見れば彼も署長も伏せながら拳銃を構えている。警官だけあってどんな時でも用心は怠ってはいなかった。
「この時の為にあえて持って来たものです」
「犯人を倒す為にか」
「そうです。また来ます」
 今度は署長にも副署長にもわかった。あまりにもはっきりとした殺気であったからだ。
「来るな」
「そうですね」
 副署長は署長の言葉に伏せたままで頷いた。
「間違いなく」
「ですがこれで終わりです」
 男は今の状況においてもまだ冷静であった。
「これで。今度で」
「そうか、では頼むぞ」
「はい」
 署長の言葉に応える。
「来た時に。これで」
「来たぞっ」
 副署長は気配だけを感じて告げた。彼にもはっきりとわかる程の強い殺気がした。それが何よりの証拠であった。

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