二十一話:愛ゆえに
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てることができないくせに、ロボットになろうとした罰。
機械にも、人間にもなれなかった中途半端な男が辿り着く当然の帰結。
だから―――
『助けて』
『助けてくれ』
『助けてください』
『タスケテ』
その声達は決してやむことなく彼の心をむしばみ続ける。
彼が死ぬその時まで、彼が本当の意味で彼らの救済を諦める時まで。
犠牲になった者達全てが救われる、あり得ないその時まで。
彼らの救いを求め続ける。それが彼の破滅的な願いなのだから。
「切嗣、うなされていたが大丈夫か?」
「アインス……大丈夫だよ。ただの……夢さ」
切嗣が目を覚ますと赤い瞳が覗き込んできていた。
その心配そうな様子に切嗣は無理をして笑いながら体を起こす。
しかし、そんな強がりは彼女には通用しない。
その温かな体に抱き寄せられ、強く抱きしめられてしまう。
「無理をするな。お前はすぐに溜め込むからな」
「はぁ……君には本当に敵わないな。……僕はね、もう……生きるのが辛いんだ」
「私のために生きて欲しいというのは……ダメなんだろうな」
切嗣はいっそ死んで楽になってしまいたいと考えている。
だが、それでも生き続けているのは今までの犠牲に報いるためだけだ。
愛した女のために生きているのではない。否、そんな生き方は許されない。
それが分かっているからこそアインスは悲しそうな表情をする。
「……ごめん」
そう、一言だけ謝罪の言葉を口にし、強く抱きしめ返す。
愛している。狂おしいほどにこの女性を愛している。
だというのに、彼女のためにしてあげられることなど何一つない。
否、もうどこにもいない犠牲者のためにしか彼は生きてはならない。
こんな自分に愛を向けてくれる彼女を死者のために犠牲にする。
愚かだ、ただひたすらに愚かな行為だ。だが、そうすることしかできない。
「アインス、君はどうして……こんな僕を愛してくれるんだい?」
「さあ、私にも理由はわからない。だが、愛情とは理屈で成り立つものでもないだろう」
「そうだね……。君には教えられてばかりだ」
柔らかく、滑らかな銀色の髪を撫でながら切嗣は暗い目をする。
つい先日に自分のせいで彼女が傷ついたというのにまた危険な目に晒してしまう。
すべての責務から逃げて、彼女と共に残りの人生を静かに過ごせればどれだけいいだろうか。
しかし、それは叶わない願いだ。
「もし、僕が今ここで君以外の全てを捨てて逃げ出すと決めたら―――君は許してくれるかい?」
アインスに問いかけるのは彼の心に確かにある願望。
決して嘘ではない確かな願い。人としての衛宮切嗣が抱いた願望。
すべてを愛する女性に奉げたいと
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