暁 〜小説投稿サイト〜
本当(ウソ)のような嘘(ホント)のハナシ
物語
【短編1】可愛い子
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わよ。だから、元気を出して…?」
顔の怪我?私は怪我なんてしてないわ。
目はパッチリで、鼻も髪も唇も何もかもが素敵なのよ!!
ほら!毎日鏡で・・・

・・・あ、あぁ・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

誰!!鏡に映ってるこの人は誰なの!!
目はこんな細くない!!鼻はこんなにつぶれてない!!髪なんか生えそろってないじゃない!!
誰なの!?
私・・・?
違う!!
私じゃない!!私じゃない!!私じゃ
コンコン...
「花子。頑張って出かけて見ましょう?どこか行きたいところはない・・・?どこでも連れて行ってあげるわよ・・・?」
行きたいところ・・・。そうだ、彼のところに行きたい。
彼のところに行かなくちゃ。私を待ってるはずよ。



 そして、彼女は丸々と膨れ上がった足を上げた。

そう呟きながらも、物語の語り手は、紙を文字で埋める作業を続けている。
「で、その人はどうなったの?その彼に会ったの?」
前のめり気味に話の続きを求める私に、語り手は、ん・・・、と私の手元を指差す。
そこには、強く握り締められた漫画の単行本があった。
あっ・・・、と我に返って折り目の付いてしまった単行本を何とか元に戻そうと机に押し付けてみる。
「本は大切にね?」
そんな語り手の言葉に、すみません、と返事をしながらも、私はさっきの話の続きが気になって仕方なかった。
そして、まだ少し丸みを帯びた単行本を本棚に戻しながら、さっきと同じ質問を語り手に投げかける。
語り手は、私の顔すら見ず、わからない、と一言返した。
「わからないって・・・。先輩が考えたお話なんでしょ?これから先も同じように考えればいいじゃないですか。」
それとも続きを考えられないんですか、と冷やかしてみる。
「僕だって、わからないものはわからないよ」
語り手は、ふぅ、とため息をつく。そんな態度に少しイラっとして声を荒げる。
「だから、先輩が考えた話なら続きはどうだってできる・・・」
そこまで言って私はあることに気づいてしまった。
考えた話なら・・・。
考えた話じゃないなら・・・?
「・・・も、もしかして、実話、なんですか?」
少しどもりながらそう問いかけると、語り手は、そのとき初めて顔を上げて、ニッと笑った。
「本当か嘘か、わからないから面白いんじゃないか」



 これはごく普通の公立高校に通う、ごく普通の女子高生のお話。
ちょっと普通と違うとするならば、なんとなく入った部活に、この「先輩」がいたことかも知れない。
 そんな私と先輩の、物語を話そうと思う。
 
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