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シークレットゲーム 〜Not Realistic〜
温もり
[9/10]

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が一番最適なのだ。……だが、あの男にそれは悪手。最悪の手だと言う事はもう理解できていた。

「あの男以外を狙わないと……。付かず離れずに……」

 そして、震える手を押さえつつ、寝床についた。









――集落・離れた小屋の中――


 手を組んだメンバーの全員が、寝息を立てていた。
 その中で、横にならず、小屋の入り口に近い所で座り、片膝を立て腕を組んでいる男がいた。

「………」

 目だけは閉じているが、眠っていない事はその雰囲気が物語っていた。
 殆どがその男に気づかず、眠りについている。当然だろう。……今日の疲労度を考えれば。唯一その男に気づいていた者もいた。

「……起きてるんでしょ。寝ないの?」

 小声でそう聞く。
 その言葉に片目だけを開けて見上げた。月明かりのみで、殆どが暗闇の中だが、誰がいるのか。はっきりと解った。

「……オレにはこれで十分だ」
「そう……」

 赤髪の少女……悠奈は、その男のとなりに腰を降ろした。
 その行動の意味をいまいち把握してなかった男、刀真は、苦言を呈す。

「少しでも寝ておけ……。まだ長いんだぞ」
「ここが良い。……ここにいさせて」
「………」

 そう言うと、悠奈は、背を刀真の肩に預けてきた。
 悠奈の鼓動が触覚を通して伝わってくる。刀真は何も言わず、その行動もとめる事は無かった。確かに、無理にでも眠っていた方が為になるとは思うが、今は良いと判断したようだ。

「……私は空っぽだった」
「空……?」
「あなたが、……刀真がその私に足り無かったものを埋めてくれたんだ。……本当にありがとう」
「……大袈裟すぎるだろう。オレは思った事を言っただけに過ぎない」
「………ふふ、アンタならそう言うって思ってたわ」

 悠奈は、そう言って笑っていた。
 そのまま、明け方まで悠奈は温もりを感じながら眠っていた。



――……正直な気持ち。自分は元々死人みたいなものだと思っていた。


 本当は、死んでいた筈の人間だった。だから、温もりなんて……別にいらないって思っていた。本当に欲しい温もりはもう二度と得られないんだから。

 だけど、今はこの温もりが愛おしくて仕方が無い。もう少しだけ、……あと、少しだけでもいい。

 悠奈は、この地獄の中で……、唯一の幸せな温もりを欲していた。……忘れていたささやかな、幸せを感じていた。







――そうして15人のプレイヤーが抱く、様々な思いを呑み込みながら……――



 ゲームの一日目は終わりを迎えた。






























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