暁 〜小説投稿サイト〜
魔女将軍
4部分:第四章
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第四章

「ホプキンズ殿」
「むう・・・・・・」
「何処に行かれるのですかな」
 穏やかな笑みで彼に問う。
「果たして何処に。行かれるのですかな」
「いえ、別に」
 そのバツの悪い顔で答えるしかなかった。
「私は別に」
「そう、何もありませんな」
 このこともはっきりと言う博士であった。
「何もない筈。そうですな」
「ええ、それは」
「ではこちらに残っていて構わない筈」
 こう彼に告げた。
「ですから。宜しいですな」
「・・・・・・わかりました」
 観念したように司祭の言葉に頷いた。人々は何故彼がそんな顔になったのかやはりわからなかった。だが司祭はそれがはっきりとわかっているようであった。
「何かおかしくないか」
「ああ、確かにな」
 人々は顔を見合わせて言い合う。
「どうしてあの針が引っ込んだんだ?」
「しかもホプキンズ殿はあんなに狼狽されて」
 彼の狼狽はさらに激しいものになっていた。人々はそれを見てさらに奇妙に思うばかりであった。それは互い絡み合い深まっていっていた。
「おかしい」
「ああ、おかしいな」
「そう、おかしいのです」
 司祭はここぞとばかりに言い切ってみせた。
「つまりこの針で刺せば適当な場所で針を出すことができますな」
「ええ、まあ」
「そうです」
 人々はそれがおおよそわかってきた。
「そうだよな。自由に針を出し入れできるのだから」
「というとだ」
 彼等も答えが次第にわかってきたのだった。そのうえでホプキンズを見やる。
「まさか」
「これは」
「そのまさかではないでしょうか」
 司祭は人々の疑問に答えるようにして今の言葉を口にしたのであった。
「考えて下さい。この針は何の為にあるのか」
「その針は」
「こうして好きな時に出し入れできます」
 実際に針を出し入れしながら見せてみせる。それは当然ながら人々の目に入り彼等の考えをさらに固めさせることになるのだった。
「例えばただの痣やシミで引っ込めれば」
「そうだよな」
「それだけでな」
「そして使い魔もまた」
 今度は話を使い魔に戻してきた。
「よくお考え下さい。蝿です」
「蝿ですか」
「他には蚊や犬や猫ですか」
「ホプキンズさんはそう仰っていました」
「確かに」
 人々はホプキンズの話をよく覚えていた。ここでは彼がしたり顔で彼等に対して説明をしたことが仇になった形となってしまっていた。
「そんなものは何処にでもいませんか」
「何処にでも?」
「そうです、蝿です」
 また蝿について言う。
「蝿なぞ何処にでもいますな」
「ええ、まあ」
「蝿なんか何処にでも」
「蚊にしろそうですな」
「俺昨日刺されたぞ」
「赤くなってるな」
 人々のうち一人が右腕をかいていた。見
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ