精神の奥底
55 ホワイトナイトの憂鬱
[10/10]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
言った。
これは熱斗と出会う前から自分に課していたもの、そして出会った後の変化を象徴するものだった。
更に今まであまり口を出してこなかった笹塚が口を開いた。
「確かにサテラポリスもオフィシャルはオレみたいな内通者がいて対立しているような構図になってます。でも最終的な目的は一緒です。犯罪を根絶すること、そのアプローチが違うだけなんスよ。本当はオレみたいな奴はいちゃいけないんです。リサさん……伊集院さんと光博士を信じてもらえませんか?」
「……笹塚さん」
「オレはマヤさんと博士が捕まった時、何もできなかった……2人があんなに必死で暁さんを逃がそうとしたのに、大人のオレは何もできずに見ていただけ……本当に情けなくて、申し訳なくて……今度こそオレ、何でもします!だから……」
笹塚は自分が内通者でありながら、WAXAという組織にどっぷり浸かっていた。
しかし、その経験が笹塚に新たなる着眼点を与えていた。
敵対しているようで、最終的に向かう場所はどちらも同じだと。
だからこそ片方が間違っている時は、もう片方がその間違いを正してやらなければならない。
いつもチャラチャラとしていて、頼りにならない笹塚が初めて頼もしいことを言った瞬間だった。
「……少し考える時間を下さい。笹塚さんが内通者だとか、整理がつかなくて」
「いいだろう。だが時間は長く取れない。2時間後、ここで待つ。いい返事を期待している」
炎山は頭を抱えたリサを見て、そう言って席を立った。
自分の唯一の家族が捕まり、親しくしていた人間が内通者だったとすれば、心の整理が追いつかないのも理解できるからだ。
特に笹塚のことに関しては、一応、裏切り行為でもある。
そんな相手とその仲間たちに協力しろと言われても素直にイエスとは即答できるものは少ないだろう。
しかし最終的にはどんな道を通ろうと同じ場所に向かっている同士だということをリサには分かって欲しかった。
「光博士、我々は木場の私生活の方を当たりましょう」
「いいのかい?彼女は?」
「ええ、いい返事をくれると思います」
玄関に向かって歩いて行く時の炎山は少し穏やかな顔をしていた。
確かに前までの自分も人を信用するということに関しては相当疎かった。
そんな自分を信用させようとした熱斗やメイルたちの必死な顔が思い浮かび、思わず笑みを浮かべる。
同時に彼らの苦労が今になってようやく分かるようになったということが、何処か嬉しかった。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ