3部分:第三章
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第三章
「蝿を。何も変わりませんね」
「ええ、まあ」
「燃えただけです」
誰もがそれをはっきりと見ていた。
「ですがそれが何か」
「そうです」
人々は訳がわからないといった様子でまた司祭に対して問うのであった。
「使い魔が裁かれただけです」
「他に何があるというのですか」
「これが使い魔ですか」
司祭はここでふとした感じで人々に言ってきた。
「これが。果たして」
「違うのですか?」
「私共は先程そう言われたのですが」
「もう一度御覧下さい」
今度は懐から何かを取り出してきた。それは白い小さな粒の集まりであった。
それは懐から出されるとすぐにその燃えてしまった蝿の死骸の上にぱらぱらとまぶすようにしてかけられる。ここでまた司祭は人々に言うのだった。
「これは塩です」
「塩!?」
「はい、そうです」
答えるその顔が笑っていた。にこやかですらある。柔和なその笑みをたたえつつ周りの人々に言葉を続けていくのであった。しかも慎重な様子で。
「これは塩です。
「塩にはですね」
「悪しきものを清める力」
人々の一人が述べた。
「そうですね。つまり塩をかければ」
「あっ・・・・・・」
「ならばこの蝿は」
「そう、付け加えるならば火にも悪しきものを清める力がありますな」
「ええ、確かに」
「ですからこの蝿は使い魔ではないのです」
今それをはっきりと言い切ってみせたのであった。
「決して」
「使い魔ではありませんか」
「そしてです」
司祭の話は続けられる。
「ホプキンズ殿」
「はい」
ホプキンズに声をかけ彼もそれに応える。
「その針をお貸し頂けますか」
「針をですか」
「そうです」
何故か拒むような顔になった彼に対して強い言葉で述べたのだった。
「宜しいですな」
「ええ」
やはり彼は拒むような顔をしていた。人々にもそれが見えており彼等はそんな彼を見て不思議で仕方なかったのだった。どうしてその様な顔をしているのか。
「どうぞ」
「はい」
こうしてその針を受け取る。彼は早速その針を己の腕に突き刺してみせた。
「なっ、司祭様」
「何を」
「御覧下さい」
人々に今刺した場所を見せるのであった。
「傷はありますかな」
「!?そういえば」
「ない」
そうであった。針で刺したというのに傷が全くなかったのである。人々はそれを見て奇妙な顔になりホプキンズはいよいよ不機嫌な顔になるのであった。
「どういうことだ、これは」
「まさか司祭様は」
「そう、魔女ということになりますな」
涼しい様子で人々に告げるのであった。
「私は傷もないですし痛みもないのですから」
「え、ええ」
「ですがそんな筈は」
「そう、私は魔女ではありません」
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