巻ノ二十九 従か戦かその十一
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「何があっても」
「そうじゃ、だから早く敵を見付けてな」
「民に知らせますか」
「そして逃げてもらう」
戦になろうとする場所からというのだ。
「是非な」
「武器を持たぬ者は戦に関わってはなりませぬ」
こう言ったのは伊佐だった。
「やはり戦はです」
「武士のすることじゃ」
「はい、民を関わらせてはなりませぬ」
「その通りじゃ、だから敵は早いうちに見付ける」
幸村も言い切る。
「そのことはな」
「そして安全な場所に逃げてもらい」
今度は由利が言った。
「戦が終わるまで、ですな」
「隠れてもらう」
「それはいいことです」
「そして民達が隠れていれば」
穴山は笑って言った。
「敵は人夫を使えなくなりますな」
「そこも狙いじゃ」
「やはりそうですか」
「戦になれば人夫も必要じゃが」
しかしというのだ。
「その人夫がおらねば兵達でするしかないからな」
「兵糧を運ぶのも飯を炊くのも」
望月も言う。
「全てですな」
「兵達がする」
「それだけ徳川の兵は疲れますな」
「そして飯も持って行かせる、農具等もな」
幸村はこうも言った。
「当然田畑も急いで刈り取ってな」
「いや、では何もないところをですな」
猿飛も言う。
「徳川殿の軍勢は来るのですな」
「駿府からな」
「はるばると」
「当然徳川殿も兵糧や人夫は持って来られるが」
しかしというのだ。
「現地で人を雇えぬのは辛いところであろう」
「そこまでお考えとは」
唸って言ったのは霧隠だった。
「いや、お流石です」
「これは父上のお考えじゃ」
「大殿の、ですか」
「攻めて来る敵には何も渡さぬ」
人もものもだ。
「そうして敵を不利な状況に追い込むのじゃ」
「徹底して、ですか」
清海は唸る様にして言った。
「そうするのですか」
「左様、そして後は地の利を活かして」
「戦いますか」
「上田の地は我等の庭じゃ、そこで戦う」
地の利を活かしてというのだ、まさに。
「そこで御主達にもじゃ」
「敵の隙を伺い」
「そうしてですな」
「攻める」
「それが我等の仕事ですな」
「そうじゃ、思う存分働くがよい」
幸村は微笑み十人の家臣達に言った。
「拙者も行くからな」
「はい、では」
「敵が来ればです」
「思う存分働かせてもらいます」
「是非共」
「そうしてもらう、まずは上田の南に行ってな」
そしてと言うのだった。
「徳川家を見るぞ」
「見付ければですな」
「その時に」
「すぐに上田まで戻り」
徳川の軍勢を見付ければというのだ。
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