1部分:第一章
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「そう、言うならば悪魔の手足」
彼の舌は実によく動くものであった。
「手足となって動いて悪事を働くのです」
「そんな恐ろしいものが魔女の傍にいるのですか」
「そうです。私はそれを発見することができます」
彼は語る。
「私ならばです」
「先生ならばなのですね」
「ですからお任せ下さい」
恭しく述べる。
「私めに。どうか」
「御願いできますか」
「先生に。その魔女を見つけ出すことが」
「必ず」
敬虔な顔で頷いてみせる。
「ですから。是非」
「わかりました。それでは」
「先生、御願いします」
ここで自然に人々から金を受け取るのだった。彼は何も言わないが人々は魔女を見つけてくれるのならと黙っていても金を差し出したのだ。しかも大金をだ。それだけ魔女が恐れられていたということでもありホプキンズが人の善意を知っていてそれを使っていたということだ。
その彼はまず魔女と思われる人間の家に来ると。すぐ使い魔を見つけ出したのだった。
「これが魔女です」
「これがですか」
「はい、そうです」
彼が見つけたのは蝿であった。一匹の蝿であった。
「この蝿こそが使い魔です」
「何と、蝿がですか」
「悪魔が化けているのです」
はっきりと語ってみせる。その蝿を指差しながら。
「蝿に」
「そうだったのですか。これが悪魔だったのですか」
「蝿になぞ化けていて」
「その通り。魔女は抜け目ないもの」
さりげなく何でも使い魔とみなせることを隠してしまった。
「だから。使い魔をこうして隠しているのです」
「蝿にですか」
「蝿だけではありませんぞ」
ホプキンズはしたり顔で語る。
「蜘蛛にも蚊にもです」
何処にでもいる虫ばかりである。
「他には犬や猫にも化けさせておりますぞ」
「何でも隠せるのですね」
「左様、それが重要なのです」
つまり何とでも言えるということであった。
「ですから。私は常に細心の注意を払って魔女を見ています」
「ではこの女は」
「そうです」
魔女を指差して答えるのであった。見れば何処にでもいそうな老婆だ。腰は曲がり手は皺だらけだ。本当に何処にでもいる感じの老婆である。
「魔女です、間違いありません」
「使い魔がいたからですか」
「それだけではありません。これです」
言いながら出してきたのは大きな針であった。
「確かに使い魔は重要な証拠ですがそれだけで決め付けるのはいけませんぞ」
「いけませんか」
「そうです。決め付けはいけません」
自分がそうであるというのは何処かにやってしまっている。
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