第四章 誓約の水精霊
エピローグ
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。
朝日に照らされたラグドリアン湖は、波打つ水面が朝日を反射させ、目映いほどの輝きを魅せていた。
その光景を眩しげに目を細め、じっと黙って見つめていたウェールズが不意に口を開いた。
「僕は幸せだった」
「はい」
「辛いことも、悲しいこともあったけど、楽しいことも、嬉しいこともあった」
「はい」
ウェールズの言葉に、アンリエッタはただ頷くのみ。ウェールズに顔を向けることはなく、ウェールズと同じように光の舞いを見せるラグドリアン湖を見つめている。
「何より、君と出会ったことが、何よりの幸せだった」
「……はい」
「僕はここで終わってしまうけど、アンリエッタには、まだまだ時間が残っている」
「……」
「だから、僕のことは忘れてくれないかな」
「っ…………」
アンリエッタは頷かず、ただ黙って隣に立つウェールズの手を強く握り締めた。
軋みを上げるほど強く握られた手に、悲しげな色が混じった目を向ける。
「僕は君を縛りたくはないんだアンリエッタ……僕に縛られ、君を前に進めなくさせたくないんだ」
「でも」
「君の幸せは……僕の幸せなんだアンリエッタ……だから、いつか君が他の誰かを愛し、子供を産み、笑えるように……幸せになれるように……僕を忘れてくれないか」
「わた、わたしは」
ウェールズのただ自分を幸せにしようとする想いに、枯れたと思っていた涙が、途切れることなく溢れ出していく。ウェールズの想いに答えたい。だけど、こればかりは、頷けない。小さく、しかしはっきりと首を振るアンリエッタ。
「いつまでも僕に縛られ、君が幸せになれないなら、僕も幸せじゃなくなる……だから、アンリエッタ……あ願いだ……僕を忘れ、他の男を好きになると……誓ってくれないか」
「……ウェールズ様」
縋るようなウェールズの声に、歯を食いしばり、顔を俯かせるアンリエッタは、じっと黙っている。
その間も、アンリエッタは握り締めるウェールズの手から、段々と生気が無くなっていくのを感じていた。ゆっくりと顔を上げたアンリエッタは、そこで初めて足を動かし、ウェールズの前に立った。
そして、ラグドリアン湖を背中に、胸に手を当て誓を立てた。
「トリステイン王国女王アンリエッタはアルビオン王国王子ウェールズと水の精霊の御許で誓約をいたします」
悲しみと優しさ……。
決意と不安……。
様々な色が顔を過ぎる中、ウェールズから目を逸らさず見つめ続けるアンリエッタ。
それにウェールズは安心したかのような、柔らかな笑みを浮かべる。
太陽がその姿を完全に現し、その輝きで世界を照らすだす。それを背中に受けたアンリエッタは、まるで光の翼を広げる天使のようであり。目にした者が思
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