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慟哭のプロメテウス
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情は変わっていた。

 そもそも魔術が失われた理由は、大地と切り離されたことでこの星の魔力(マナ)が人類に供給されなくなったせいだ。それが、再び接続したのなら、どうなるのか。

 結果は、すぐに明らかになった。

 マナを大量に接種したせいで、人類そのものを魔術として、刻印魔術が暴走した。魔術は人を取り込み、新生させたのだ。

 誕生したそれらを、『吸血鬼』という。

 彼らは人であり、魔術であり、そのどちらでもない。彼らは己を維持するために魔力を欲する。どうしてなのかは解明されていないが、接種すべき魔力は、人のそれのみが対象となる。

 故に、『吸血鬼』は人を襲う。血管から魔術回路に介入する方法が最も効率が良いらしく、彼らは同時に血を吸った。それ故、彼らは『吸血鬼』と呼ばれる。

 『爵位』と呼ばれる階級が上がり、強力な存在となった『吸血鬼』には、魔力を必要としない個体も存在する。というより、『侯爵級(マーキス)』以上の個体は自力で己を維持できるため、魔力接種、ひいては吸血行為は必要ないのだ。

 特に危険なのは、そんな吸血行為が必要でない上位の『吸血鬼』でありながら、道楽的に吸血行為を行う者達だ。

 一般に『狂騒種(ブルートザオガー)』と呼ばれる彼らは、非常に厄介だ。故に、彼らを狩るために戦う者達が存在する。彼らは復讐や私怨、はたまた道楽的に『狂騒種』と争う。

 青年も、そのうちの一人だ。しかし彼は、他の者達とは少し戦う動機が違っていた。


 ***


「ふははははッ! その様なナリで我の前に姿を現すとは、滑稽極まりないわ! その白い面、さては貴様、道化の真似事のつもりか?」
「……」

 崩れ果てた古城の遺跡。その中で、辛うじてかつての形を保っている大広間──瓦礫に埋もれたそこに、玉座らしき椅子を無理矢理置いて、その上に座る一人の男。

 髪は金。瞳は赤。黒の燕尾服に身を包む。身長は190センチ近くか。高い。どちらかといえば小柄な部類に入る青年は、彼を見上げなければならなかった。

 体に奔る紋様が目を引く。『刻印』。刻印魔術を封じ込めた紋章であり、『吸血鬼』の証。

 この男が、今回の獲物。『侯爵級(マーキス)』の『狂騒種』。その肩書きが示す通り、かなり強力な『吸血鬼』だろう。体全体に広がっているとおぼしき『刻印』もまた、その象徴だ。『吸血鬼』は、『刻印』が広がるほどに力を増すのだから。

「黙りか……まぁいい。して、貴様。何の故に我に挑む?」
「別にあんたに挑む理由なんて無いよ。聞きたいことがあるだけだ」

 青年が白い面に隠された目で男を睨むと、『吸血鬼』の侯爵は、ほう、と目を細めた。

「よい。申してみよ」
「──あんたの知り合いの中に、『十三死徒(エ
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