暁 〜小説投稿サイト〜
ホウエン地方LOVEな俺がゲームの中に吸い込まれちゃった
サマヨールとユウキ
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キは瓦礫を避けつつ空いた壁から空中へダイブ。ビル二階から紐なしバンジーを決行した。数十メートルの高さに身を震わせながらもなんとか受け身を取ることに成功する。

「骨何本か持ってかれるかと思ったけど……さすがポケモン世界。人間のステータスも高いこって」

 これがスーパーミシロ人の力か……。
 と打ち震えていると上からサマヨールが降ってきた。右手でゲンガーとヤンデレ系幽霊女をもんずと掴んで着地。目を回している幽霊を放置してゲンガーをビルの壁に叩きつけた。

「グ……ゲゲゲ(くっ、ころせ)」

 その言葉に、

「ヨ」

 サマヨールの、

「ォ」

 スイッチが

「ル」

 入った。

「ヨォル」

 サマヨールの顔にーー喜悦が混じる。

「ヨォル(ナイトヘッド)」
「ガッ(ぐへっ)」

 そして、いたみわけ。

「ヨォル(ナイトヘッド)」

 そして、ねむる。

「ヨォル(ナイトヘッド)」

 そして、いたみわけ。
 そこでユウキが異変に気づく。

「おい、そろそろ……」

 ナイトヘッドで痛めつけ、いたみわけで回復させ、自分のHPが減ったらねむるで回復する。あとはループするだけだ。
 そしてサマヨールは満面の笑みを浮かべる。

 あぁ、一つ記し忘れていた。

 他のポケモン同様ユウキを好きという気持ちは変わらない。ただ、キノガッサの様な確固たる意思を持っていないだけだ。

 というのが表。

 無個性という個性?……いや違う。
 ユウキのパーティーにいて、個性が強くないわけがない。

 彼にはもう一つの顔があった。

 大きな一つ目がゆっくりと細められる。HPの減衰を何度も味あわせられるゲンガーはナイトヘッドを受けるたびに苦しげに呻く。

 《《それがサマヨールを喜ばせる》》。

「ぐ、げげ……」

 カクンと気を失ったゲンガー。たとえHPは回復しても無限に続く痛みに耐えかねて意識が勝手に落ちたのだ。

「ヨルルルル」

 サマヨールが嗤う。《《スイッチが入った時》》、彼は嗤う。

「ヨォォォォル(もーっといい声を私に聞かせてくれぇ)」
 
 サマヨールは相手をとことん乏しめて喜ぶ変態さん。


 真性のドSだった。


 親しい友人に異常性壁を見せつけられたような、覗いてはいけない世界を見てしまった気がして、ユウキは口をパクパクさせていた。
 ただ、こうしている間にもサマヨールがいたみわけで無理やりゲンガーを起こしてあの地獄の無限ループに引きずり込もうとしている。

「む、無限ループって怖くね」

 辛うじて身体を動かすとモンスターボールを取り出す。
 
「あの……お楽しみでしたね……」
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