九十九 新たなる
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とやんわりとした言葉でナルに事情を説明したかった。
けれど、まだ彼は子どもだった。ナルも、まだ子どもだった。二人とも難しい事柄を上手く言葉には出来なかった。
シカマルの言葉の意をようやっと悟って、ナルの顔から血の気が引いた。シカマルの好きな青の瞳がみるみるうちに哀しみに彩られてゆく。
青褪めてゆくナルの両肩を、シカマルはがしりと掴んだ。その行動に一瞬驚くナルだが、肩から伝わる手の震えに、理解する。
シカマルもまた、辛いのだと。同時に、サクラの里抜けが事実だという事も、彼女は知ってしまった。
「頼むから…、っ」
震える手をそのままに、シカマルは懇願した。
今は哀しみに曇っているナルの瞳が、いつもの空の澄んだ青に戻ってゆくのを願って。
「頼むから、独りでなんとかしようと思うな。お前の傍には俺が…、皆がいる。お前は独りじゃない……それだけは、わかってくれ…ッ」
すぐに無茶をする真っ直ぐな人間だからこそ、今にもサスケとサクラを連れ戻そうと飛び出しそうなナルの肩を、シカマルは震える手で押し止める。
波風ナルというこの少女はいつも真っ直ぐで、自分だけの力でなんとかしようとする。頑張り過ぎて周りが心配しても、大丈夫だってばよ、といつもの眩しい笑顔ではぐらかされてしまう。
それがシカマルには歯痒かった。今回の里抜けの件も、独りでどうにかしようと躍起になる可能性がナルにはあるのだ。だからシカマルは、彼女が同じ七班の二人をすぐさま追ってしまう事だけは避けたかった。
ナルが木ノ葉の里からいなくなってしまうなんて、シカマルには耐えられなかった。第一、シカマルはサスケの里抜け理由を知っている。故に余計、ナルを行かせたく無かった。
彼女が必死になって里へ連れ戻そうとするサスケへの嫉妬もあったかもしれない。だが、それ抜きにしてもナルには自分が孤独ではない事を知って欲しかった。
一人でどうにかしようとして頑張り過ぎるナルに、自分を、皆を頼ってほしかった。
「お前が仲間想いなのは知ってる。だから三人を連れ戻そうと逸る気持ちもわかる。辛い気持ちもわかる……でも、お前の仲間はその三人だけか?」
シカマルの切なる言葉に、ナルはハッと顔を上げる。こちらを見据える切れ長の黒い瞳がナルへ静かに語りかけていた。
「お前は独りじゃないんだ。もっと仲間を…俺を、」
「俺達を頼るべきだ」
突然割り込んできた静かな声に、ナルとシカマルの肩が同時に跳ねた。
いつの間に病室に入ってきたのか。我愛羅がベッドに座るナルとシカマルを見下ろしている。いつもの如く無表情なのが、逆に恐ろしい。
「が、我愛羅…っ!?」
「ナル、具合はどうだ?」
シカマルを押し退けるように我愛羅がナルに淡々と問う。ナルから離
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