二十話:三者
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されていない。
もっとも、その場で航空券を買うつもりだった客であれば確認でいても当然なのだが。
「はやてちゃん!」
「ん? ああ、ごめんなぁ。ちょっとぼーっとしとったわ」
「もう、何か考えてたんでしょ、はやて。悩み事なら相談してよ、水臭いよ」
「あはは、二人にはお見通しか。まぁ、そんな悩み事って訳でもないんやけどな。一体どんな人やったんかなぁってな」
それがどうしても気になるのは直感で自分の身近な者だと気づいていたのか。
それとも、純粋に礼を言いたかったのか。はやてにも本当のところは分からない。
ただ、分かるのは自分が“正義の味方”という言葉に異常な思い入れがあるということだけ。
なのはとフェイトもそのことに思い至り、納得のいった表情をする。
「正義の味方……って呼ばれてるんだっけ、その人」
「そうやね。今でも……その言葉の意味を考えてしまうんよ」
『大丈夫やよ。おとんは―――正義の味方になれるよ』
かつて養父の背中を押してしまったその言葉は今でも覚えている。
正義の味方とは大勢の為に小数を犠牲にする、現状維持を行うだけの装置。
養父に聞けばそう答えたかもしれない言葉を思い描く。
だが、同時に彼も彼女もあの事件で知ってしまった。本物の正義の味方を。
目の前で自分のことを心配してくれる親友二人は間違いなく彼女にとって正義の味方だった。
それがはやてが希望を諦めないで済む根拠であり、養父が己の罪深さに絶望した根拠でもある。
「ヒーローは期間限定で、大人になると名乗るのが難しくなる……そんなことないと思いたいなぁ」
「大人になると難しくなる…か。本当に、そうはなりたくないね」
「そうやなぁ、夢を諦めた大人やのうて、夢を叶えた大人になりたいなぁ」
しみじみとそんなことを話す、はやてとフェイト。
多くの人間が子供の頃に抱いた夢を諦める。そして悔し紛れにそれを大人になると語る。
だが、どれだけ言いつくろうと、自分を騙そうと、諦めたという事実は変わらない。
よく、夢や理想を馬鹿にする人間ほど真剣にそれらと向き合ったこともなければ現実にぶつかり続けているわけでもない。
逆に夢や理想を追う人間を応援する人間ほどかつてそれらを追いかけ、現実という壁に叩き潰された者が多い。
結局のところ最初から不可能な夢を抱いていたとしても止めるのは妥協でしかない。
何も妥協が悪いわけではない。生きていくためには必要な能力だ。
しかし、一生、諦めたことを心のどこかに燻らせながら生きている。
大人とは夢を諦めた存在を言うのではなく、夢を叶えた存在を言うべきだ。
それがどれだけ、難しく理想的なことかも分かっている。
だとしても、そう願いたい。それが理想というものだ
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