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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第135話 相馬さつき
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宝珠《にょいほうじゅ》『護』を起動。

 その刹那、火刑に処されようとした魔女の如き状態となって居たさつきの身体を白い光が包み込む。そして、その光が消えた後には――
 出会った時に彼女が着ていた黒のコートに身を包むさつきが、其処に存在していた。

 もっとも、如意宝珠で再現したのは黒のコートのみ。その下は、確認した訳ではないけど、おそらく下着すら存在していないでしょう。
 こう考えた時、何故か怒っているハルヒの顔が最初に浮かんだのはナイショ。

 一瞬、戦場に有るまじき形で緩み掛けた頬を引き締める俺。確かにさつきの拘束は完成したが、未だ完全に終わった訳ではない。
 そう考え、視界の端の方で愛用の弓を構えたままでこちらを見つめる巫女姿の少女に視線を移す俺。

 今の彼女は臨時の龍の巫女。確かに、有希やタバサのように俺の霊気を調整、制御が出来る訳ではありませんが、それでも術を合わせて、相乗させる事は出来る様子。
 もし、俺が産まれた世界で――いや、有希やタバサよりも先に彼女と出会って居たのなら、俺の人生はその段階で変わって居たかも知れない相手……のように感じる。

 もっとも、さつき……いや、ハルケギニアで出会った崇拝される者との間で為された、攻守の交代が流れるように行われた戦いを経験した際には彼女の事を。タバサや有希、湖の乙女との連携を経験した時は彼女たちそれぞれの事を何者にも代えがたい相棒だと感じたので……。
 結局、俺は何度人生を重ねようとも、一人では戦う事さえ真面に熟せない存在だったと言う事ですか。

 自らが重ねて来た転生の意味に、少し陰に傾く気分。しかし、それも無理矢理に噛み砕き、少し苦い感傷として呑み込む俺。自身が何でも出来る英雄(ヒーロー)などでない事は先刻承知。そのような事を今ここで嘆いても仕方がない。

 視線が合い、大きく首肯く弓月さん。尚、彼女は俺が先ほどのさつきの姿を瞳に映した可能性については素直にスルー。もっとも、俺の側から言わせて貰えば、アレは不可抗力。コッチにそんな意志はなかったのだから、スルーされて当然でしょう。
 何故か彼女の瞳を覗き込んだ瞬間、少々言い訳じみて来る思考。但し、それも矢張り一瞬の事。

「夜の守。日の守。大成哉(おおいなるかな)賢成哉(けんなるかな)
 稲荷秘文慎み慎みもうす」
「我らを試みにあわせず、悪より救いだしたまえ――」

 稲荷大神秘文。そして祈りの詞の最後の部分を口にする弓月さんと俺。
 そして放たれる鳴弦。更に――

 右の掌底に溜める気。いや、これは純度の高い龍気。俺の両手両足と磔にされたさつきの同じ個所か強い輝きに彩られる。
 但し、さつきには俺に刻まれた聖痕に一か所足りない!

 自らの中に渦巻く光を強く感じる。
 
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