第6章 流されて異界
第135話 相馬さつき
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光が……いや、この場所に辿り着いた時には濃い闇に押されながらも、確かに輝いていた月と星の光が弱まって居た。
おそらく、池……虚無より立ち昇る闇の勢いが光を凌駕したのだ。それだけ、アラハバキ召喚の段階が進んだと言う事か。
僅かな間に状況確認。確かに時間的な余裕がある訳ではない。しかし、同時に慌てる必要もない。
何故ならば、このアラハバキ召喚術には致命的な欠陥がある。この欠陥は未だ排除されていない。
そう考え、今はさつきの精神の解放を優先。
何もない空間に掲げられたさつき。丁度、俺と同じ目線の高さにまで持ち上げられ、その場で、まるで十字架に掲げられた聖者の如き姿でもがいている状態。
彼女の周囲には風が渦巻き、俺が掴んだ両手首と、弓月さんが撃ち抜いた両の足首それぞれに、拘束を示す淡い光りの帯が存在していた。
これは蜘蛛の巣に絡め取られた蝶の儚さか。それとも、本当に人類すべての原罪を背負い十字架に掲げられた聖者の似姿か。
その瞬間、生気のない。普段のハルヒとは少し違う理由ながらも、似たような強い瞳で俺を射抜く彼女の瞳からは考えられないほどのドロッとした瞳と視線が合う。
その時、夢見る彼女のくちびるが小さく動――
刹那、俺の周囲に魔法円が発生。それと同時に彼女の衣服が猛烈な勢いで燃え上がる。
これは魔法反射が発動した証。矢張り、未だ完全に彼女の能力……本来の彼女に加護を与える存在の能力を完全に封じ切る前の油断は危険過ぎるか。
ただ、さつき自身が発する炎が彼女を害する可能性は低い。俺に雷の気が無効なように、彼女は炎に対してある程度の耐性はあるはず。問題は、彼女が着ている服に関して、その範疇に入るかどうかが分からない事ぐらいか。
何にしてもこの炎をどうにかしなければ危険過ぎて近付きも出来はしないが。
三歩、歩み寄る間に考えを纏め、十字架に掲げられ、その後、炎の柱と化したさつきに後一歩の距離の位置に立ち止まる俺。
見えない十字架に掲げられ、その後、炎を纏った彼女はまるで中世ヨーロッパで吹き荒れた魔女狩りの犠牲者の姿。既に衣服の大部分は炎に包まれ、長き黒髪はこれから先の彼女の未来を暗示するかのように不吉に揺らめく。
そして――
「大元帥明王に帰命し奉る。汝の威徳と守護を授けたまえ」
それまで分割した思考と印形のみで唱え続けて来た祝詞の、最後の部分を現実の言葉として口にする俺。
その刹那、それまで半完成状態であった風の呪縛が完成。さつきの周囲に蟠っていた闇、そして、彼女自身が完全に支配下に置いて居た炎の精霊たちの舞いを無効化。
その事により、彼女を覆っていた炎がすべて振り払われ――
視界の真ん中に妙に白く、柔らかな何かが現われた瞬間に視線を外し、同時に|如意
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