第6章 流されて異界
第135話 相馬さつき
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り、さつき自身の行動の阻害へと変わったのか、それまで最初と比べるとスピードも、勢いも落ちて来たとは言え、確実に弓月さんとの距離を詰めていた動きが一瞬止まる。
刹那、戦場を貫く――高く、短い良く澄んだ音が響く。その数は二度!
そして、その弦音が響いた直後、さつきの両足首が淡く光輝を放ち――
魂の絶叫! 今までさつきから聞かされた事のない大きな声。
当然、弓の連射。それも間を置かない連射など不可能であろう。しかし、弓月さんの鳴弦は矢をつがえ、放つ必要のない神道系の術。その弦音に魔を退ける呪が籠って居ると言われている神の技。
更に、魔を退けるとは言われているが、効果があるのは魔のみ。つまり、人間であるさつきには一切の被害が及ぶ事はない。
……はず。
一進一退の攻防。いや、これまでは攻防にすら届いていないか。ここまでの経過から分かった事と言えば、さつき一人では、俺と弓月さんを留める事は出来ないと言う事ぐらい。
俺たちの側に彼女を傷付ける事が出来ない……と言う縛りがなければ、ここまでの交錯の間に彼女を無力化出来ている事は想像に難くない。
「我らを試みにあわせず、悪より救い出し給え」
十メートル近い彼我の距離を五歩も掛けずゼロにした俺。目の前には立ち止まり次の行動に移り出せないさつきの小さな背中が――
今、正に手を伸ばし、次の術式を打ち込もうとしたその瞬間!
後方に迫りつつあった俺の気配に気付いたさつきが、振り返り様に左腕を振るう!
ほぼ勘のみに頼ったかのような裏拳の一撃! そう、いくらなんでも接近する際にある程度の気配を断ち、更に常識では考えられないほどの速度で接近して居た俺を相手に、カウンター気味に裏拳の一撃を入れられる相手は少ない。
この瞬間に長い髪の毛により隠されたさつきの顔に、無以外の何か……ぞっとする何かが浮かんだような気がした。
しかし!
その攻撃を敢えて正面から受ける俺。その瞬間、俺と攻撃を加えて来たさつきの腕との間に発生する魔法円。
これはあの時……暗く、冷たい旅館の廊下で有希が施してくれた術。ありとあらゆる物理的な攻撃を一度だけ反射する仙術が発動した証。後方から猛スピードで接近する俺を確認する事もなく、反射的に放った横殴りの一撃が、さつきの頭部へと返され――
その、自ら放った一撃で右側に流れるさつきの身体。その宙を流れる左手首を掴む俺。
刹那、術式の重要な部分が起動した!
限界まで高まっていた戦闘の気配が突如止み、周囲には犬神使いが唱え続ける祝詞が響くのみ。
天を貫く雷も、大地を焼く炎も、そして、鳴弦の妙なる響きに重なる祝詞と祈りの詞も途絶え……。
ふたりの女神、そしてその周りを取り巻く星々が放つ冷たい
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