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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第135話 相馬さつき
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さつきに関しては何の障害を得る事もなく、俺と弓月さんの丁度中間点辺りに着地。
 そして、その着地の勢いを利用して――

 弓月さんに急接近を開始。革のローファーの裏からまるで炎を放つようなその勢いは、正に砲弾の如き!
 対して弓月さんの方は、さつきが俺に対して放った赤い炎の蛇に対応していた為、一瞬だけ反応が遅れる!

「疾ッ!」

 更に思考を分割。そして同時に右手の印を解き、複数の呪符を放つ俺。
 同時に左手で結ぶ印に籠める霊気を増加。体内を駆け巡りながらも、今この時まで明確な目的の示されていなかった強い力を少し解放。

 刹那、俺の後方から吹き抜ける一陣の風。その風により、周囲に蟠りつつあった闇が払拭され、同時に高く舞い上げられた呪符が空中にて起動。蒼く輝く魔法陣を構築した。

 その瞬間!

 大気を震わせる轟音。目も眩むような強烈な光。さつきの足元に飛来する雷!
 一枚に付き一撃。都合、八発の九天応元雷声普化天尊法(きゅうてんおうげんらいせいふかてんそんほう)が――

 但し、それは所詮牽制に過ぎない攻撃。当然、一般人ならばそんな近くに雷が落ちれば無事では済まないが、操られているとは言ってもさつきは相馬の姫。口先だけが達者で実力が伴わない表の世界の術者などではなく、正真正銘の術者。
 大地を穿つ雷が、さつきの足元を狙うように次々と撃ち付けられる。
 大地を走る雷が残した傷痕。無数の穴と、雷の蛇が這いまわった痕――リヒテンベルク図形を冬枯れの芝生の上に付けながら……。

 しかし、僅かに速度を緩め、左へ右へと回避行動を行いながらも、それでも弓月さんに近付こうとするさつき。
 徒手空拳。しかし、それでも弓は遠距離には強いが、近距離には弱い。精神を支配されながらも、戦闘に関しての決断は早く、そして正確。

 しかし! そう、しかし!

天狐(てんこ)地狐(ちこ)空狐(くうこ)赤狐(しゃくこ)白狐(びゃっこ)。稲荷の八霊。五狐の神の光の玉なれば」

 攻撃に対する僅かな減速と、直線ではなく回避運動を入れながらの接近。このふたつの要素だけで、今の弓月さんが体勢を整えるには十分な時間を与えた。
 最初と同じように僅かに後退しながら構えられる弓。

「誰も信ずべし、心願を以て。空界蓮來(くうかいれんらい)。高空の玉。神狐の神。鏡位を改め神寶(かんたから)を以て」

 更に紡がれる稲荷大神秘文。祝詞が、祈りの詞がひとつ紡がれる毎に高まって行く霊気。
 そして、彼女の祝詞に呼応させ、組む印に龍気を集中させる俺。同時に弓月さんの瞳を見つめる。

 その瞬間、それまで俺の背後から吹き付けて来ていた風が止み、正面からの風へと変化。自らが発生させている膨大な熱の産み出す上昇気流が渦とな
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