第6章 流されて異界
第135話 相馬さつき
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のパターンで印を結び続けて来た両手を自由に。
そして、振り抜かれたさつきの細い……彼女の外見に相応しい華奢な右手首を掴み、そのまま巻き込むように――
「我らに罪を犯すものを我らが赦す如く、我らの罪をも赦し給え!」
しかし!
腰で撥ね上げた瞬間、彼女の身体が体重のない存在で有るかのように身体を捻り――
無理な方向に関節を捻り、彼女の腕自体が使い物に成らなくなる事を一瞬怖れた俺。その弱気と打算の綯い交ぜになった感情により拘束が緩まった瞬間、さつきは自らの腕が使い物にならなくなる事を恐れる事もなく、更に自らの武器である毛抜き形太刀を手放し、投げを放とうとした俺に全体重を預けて倒立。
そして、僅かに反動を付け宙に舞った。
チッ、武器であり、人質でもある精神を操られたヤツの相手をするのは骨が折れる。
心の中……分割された思考の片隅で一瞬だけ舌打ち。ただ、出来るだけさつきに怪我を負わせたくないのは事実。
何故ならば、犬神使いが言うアラハバキ召喚用の生け贄の代用品が、さつきである可能性が当然、存在するから。
例え本当に犬神使いとさつきが姉弟の関係であろうとも、人間としてもっとも大切な感情。他者を傷付けてはならない、と言う感情を既に失っている犬神使いの青年に、そんな一般的な禁忌は残っていないだろう。おそらく、必要とあらばさつきの生命どころか、自らの生命すらアラハバキに差し出すはず。
狂信者と言うのはそう言う連中。人語が通用する可能性も低く、真面な判断力も有していない場合が多い。
今の戦いの目的。犬神使いの青年の目的はおそらく時間稼ぎ。その中に、自らが姉と呼ぶ存在の相馬さつきの身の安全に対する配慮はない。
そして、俺と弓月さんの目的もまた時間稼ぎ。あまりにも圧倒的な能力差を見せる事によって、さつきに人間の盾としての価値すらない、と判断され、自ら生命を断たせるような命令を行使させないための、作られた膠着状態。
すべては安全にさつきをコチラのサイドに呼び戻す。その為の準備の段階。
刹那、弓月さんの援護射撃が、後方に流れ、急制動した炎の蛇を次々と撃ち落として終った。
成るほど、これなら大丈夫。心の中でのみ大きく首肯く俺。
有希や万結を旅館の護りに置いて来た事に多少の不安を感じていたのですが、今までの弓月さんの動きを見る限り、それは杞憂に終わった模様。おそらく、今の彼女の術者としての実力は現状の有希と比べてもそう遜色はない、と思う。
弦を弾くだけの鳴弦は、しかし、退魔の技術としてはかなり高度な技。故に、術者の力量に因って効果がまちまちとなる物なのですが、彼女に関しては一級品。
これならば問題なく背中を預けられる。
但し、そちらを優先したが故に、空中に退避した
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