第6章 流されて異界
第135話 相馬さつき
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生服、そして、蒼の髪の毛一筋すら害する事は叶わず。
そう。例え、複雑な印を両手で組みながら、更に分割思考で複数の術式を同時起動させながらでも今の体調ならば問題ない。
伊達に何回分もの転生の記憶を思い出さされた訳ではない!
そして!
火球を放った直後に急接近して来る俺に対して、迎撃の構えを見せるさつき。この対応ひとつを見ただけでも、彼女が普段の彼女でない事が確実。
何故ならば――
既に鞘に納められていた毛抜き形太刀を、今度は、抜く手も見せずに引き抜き様の一閃。同時に立ち昇った数本の炎がまるで赤い蛇の如く、目の前に迫った俺をその毒牙に掛けようと迫る!
赤い、紅い、朱い火の粉が踊り、長い黒髪が彼女を中心に発生した上昇気流により不自然にうねった。
そう、それ自身がまるで異界から鎌首をもたげて獲物を狙う紅蓮の毒蛇の如き形。
一瞬、炎の中心に存在する禍々しき、しかし、さつき自身の美しい姿に瞳を奪われ掛ける俺。その瞬間!
彼女を中心にした空間に猛烈な光が発生。その発生した光が闇に慣れた俺の瞳を焼き――
小細工か!
気付いた瞬間に目蓋を閉じたが、それでも――
しかし、視力を奪われたのはほんの一瞬。まして、俺の見鬼の才は現実の瞳や視力に頼った物ではない。これほどの悪意を放つ赤い蛇が接近して来る様など、目が見えようと、見えまいとに関わらず、肌で感じ取る事が出来る!
そう。今のさつきは恐れるに足らず。普段の……今まで、俺が戦って来た彼女は常に先手を取り、終始攻め続けて一気に押し切るタイプ。その彼女が迎撃の構えを取るなど、とてもではないが今の彼女が正気だとは思えない。
踏み込み様に放たれた左斜め下からの気配を、右足に体重移動を行う軽いスウェーバックのみで回避。鼻先数センチの空間を斜めに切り上げて行く炎の刃による攻撃も、大気に焦げ臭い香りを付けた事を感じさせただけに終わる。更に、それから一瞬遅れて襲い掛かって来る赤い炎の蛇を、ヤツラが撃ち出された際の僅かなタイムラグを利用して躱す、躱す、躱す!
しっかりと見えなくても感じる。更に、さつき自身の動きは普段の彼女の動きではない!
そう、これぞ正に紙一重。普段もかなりギリギリで躱す感覚だが、今宵はその普段の自分すらも嘲笑うかのような刹那のタイミング。世界のすべて。見鬼が捉えた気配。耳に聞こえた音。肌で感じる熱や風の動き。そして自分の感情すらも無機質に捉え、次の身体の動きを決定する情報として使用している。そんな状態。
俺の精霊の守りを抜けた僅かな熱が表皮を炙ったが、そんな物は焚火に近寄った程度の感覚。猛烈な熱量により発生した上昇気流に、少し伸びて来た蒼の前髪を払われた程度。
そして!
この瞬間、それまである一定
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