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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第135話 相馬さつき
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り込まれる。神経には普段の百倍……いや、千倍以上の情報が駆け巡っていた。
 そう。現在の俺、そして弓月さんも神の領域で戦える術者。感覚を、肉体を通常の人間の限界を超えるレベルにまで高めた存在。

 しかし、それは相手の方も大きく変わりはしない!

 刹那、抜き放った毛抜き形太刀を無造作に振り抜いたさつき。空間を縦に斬り裂く一本の紅く燃える断線。
 その瞬間――

 ふわり。そう言う形容詞が相応しい雰囲気で、それまで刃に纏わり付いていた昏い炎が……離れた。

 大きさはバスケットボール大。その十を超える昏い炎の塊が、奴らに相応しい禍々しき気を放ちながら、さつきに向け疾走を開始した俺に向かって飛来する!
 爆発的に拡大するさつきの霊気。その影響により、一瞬にして冷たい冬の大気が沸騰する。そう、元来彼女が従えられる精霊は火行の精霊。その精霊たちに限界を超えた量の霊気を神刀の一振りで与えたのだ。
 これぞまさに天上の業火と言う雰囲気であろうか。

 そう、ここは元々、霧の如き闇が纏わり付くかのような、異常な湿気に覆われた場所。その中心に発生した狂気に等しい熱量により、空気中の水分が一瞬の内に蒸発。体積が千倍以上に膨れ上がる現象。水蒸気爆発に等しい衝撃を発生させながら――

 しかし!

 世にも妙なる音色が立て続けに鳴った。
 その音の一瞬の後、遙か上空に舞い上がったふたつの火球が消滅。

 見なくとも分かる。これは鳴弦(めいげん)。実際に矢を放つ事なく、弦を鳴らすだけで魔を穿つ神道の技。
 正に音速で放たれる見えない矢。これを躱せる魔は殆んど居るまい。

 左右。そして、地を這うように接近中の複数の火球。まるで蜘蛛の網にも似たその紅き包囲網。その速度は正に神速。一般人では正確に眼で追う事さえ不可能なレベルであろうか。
 しかし!
 更にギアを一段階アップ! しなやかな膝と、強靭な足首により右に左にと不規則に動きながらもその速度は衰える事なく、あろうことか一段と加速した俺。その走りは岩を砕き、大地を削るかのような勢い。しかし、現実には地を覆う冬枯れの芝生を一切傷付ける事のない繊細な動き。
 その現実界に生存するすべての生命体にあり得ない速度に、左右から接近中であった火球は目標を見失い、後方へと流され、そこで再び放たれた鳴弦(音速の攻撃)に因って次々と消滅させられる。

御国(みくに)を来たらし給え。御心(みこころ)を天におけるがごとく、地にも行なわし給え」

 地を這うように接近しつつ有った火球の内のひとつは、霊気を宿した右足で一蹴。普段の数倍軽く感じる身体に、供給過剰なまでに生成される龍気。
 数瞬遅れて届く爆風……一般人ならば致命傷と成りかねない熱風を、その身に纏いし精霊光で無効化。黒き学
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