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殺戮を欲する少年の悲痛を謳う。
10話 無知で愚かな人間(ヒューマン)
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なぜなら君には作戦指揮を立てる能力も脳みそも足りていない」
「殺せば何でも解決だ」
「じゃあ今僕を殺しな?それが出来ないと無理だよ?」
 少年は噛み千切った方の手に再び歯を突き立てて来る。僕はそれを回避し、飛び上がり、踵落としで肩を外す。少年は痛い痛いと泣き叫ぶ。
「だろ?君じゃ無理だ。とっとと消えてくれ」
「わかった!その代わり。殺しの手伝いはするから」
 少年は僕の中に消えていった。
 多分これで、僕の殺戮衝動は弱まっただろう。まあ、なくなるのは時間の問題だ。
「君はすごいな。つくづく驚かされる。壊れた心を一瞬で修復し、手のつけようがなくなった負のエネルギー体を手懐けた。普通の人間じゃ出来ないだろ」
「僕のレプリカに言われてもな…」
「言っておくが、僕は確かに君と同じ存在だが、もう違うものだ。だから僕は僕で君は君だ。似て非なる」
「知っているさ。でも僕を褒めるのはお門違いな気がするんだが」
 会話が弾んだところで、彼は僕に伝える。
「でも僕はもう逝くよ、カリヒ。リーナの居ない世界なんか、生きていたって仕方がないからね」
 僕は頷く。
 すると彼は音を立て、光のように消えていった。僕の心に負の感情が人並みに戻ってきた。
「僕は立ち直るつもりはないよ」


 僕の目の前にはクロノスが居た。それはもう。怯えている。そしてクロノスの隣にはリーナの死体があった。
 僕は自分の時計を見る。
「1秒も経っていない?」
 あの不思議空間は僕だけの時間が流れていたのだとでも言うのだろうか?
「クロノス」
「俺じゃない。俺じゃない」
「少し外してくれ。リーナにお別れを言いたいんだ」
「あ?ああ」
 青ざめた顔で、彼は銃を置き、外に出て行った。完全に生きる意味を失っただろう。僕はクロノスが去るのを確認し、リーナを抱えた。
 未だ体温が少し残っているが、すでに生温い程度で、生を感じない。
 しかし、僕は彼女に…彼女の肉に伝える。聞こえているといいな。そう願いながら。
「リーナ。僕は君には何もしてあげることが出来なかった。だから、ごめんね。それしか言えることがないや。
 だけどね。思うんだ。君が居なかったら、知識を持て余していた。なんて言ったらいいのかわからないよ。君が居てくれてよかったってしか。
 言葉がまとまらない。どうしよう。今、君と話がしたい。何でもいい。なんでもいいんだ。だから…ごめんね。僕は君と話がしたい」
 涙が止まらなかった。同じ言葉を何度も繰り返し、彼女の体を抱いて、涙する。
 服に、体に、大量の血を浴びて、彼女の匂いを、鼻で、肌で、目で感じ取って、最後の別れを告げた。
「僕は初めてあった時、確かに、自分の妹を思い出した。でも、そのうち君がたまらなく好きになった。嫌だ。別れたくない。君とずっと
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