暁 〜小説投稿サイト〜
殺戮を欲する少年の悲痛を謳う。
10話 無知で愚かな人間(ヒューマン)
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應えたのが、
『私を私と見てほしい』
 だった。
 確かに、今思えば。僕が彼女にあった感情は愛ではなく後悔だった。
 もっとリナと過ごしたかったという心の片隅にあった願いを彼女は読み取ったのだろう。
 何が罪悪感だ。ただの押し付けだろ。
「やっと気がついたか。君はいつも僕を困らせる。何度君の尻拭いをしたと思っているんだ?」
 僕は傲慢だ。愛されたいがために今目の前に居る彼を作り出し、負の感情をすべて押し付けた。
 待て?
 すべて?
 僕には殺戮衝動がある。それは僕の何よりの快楽だ。それは負の感情に含まれるはずだ。もう1人が僕の負の感情をすべて持っているのであれば、誰がこの衝動を持っているのだ?

『僕だよ!』

 僕と、もう1人の他に人格はあった。その人格はどちらの僕にも干渉していたのだ。
 そしてその僕は…
 小学生くらいの背格好で…
「まずい。カリヒ。逃げるぞ!」
「は?」
 僕はもう1人に手を引かれた。
 さっきまで壊れかけていた僕の体はもうすでに“直っていた”
「なあ。あいつは?」
「僕が“産まれる前”から居た。怖くて今まで近づかなかったが、一番やばいやつだ」
 思い出した。あいつは…僕が拷問されていた時の…
 少年は真っ黒な空間を縦横無尽に駆け、僕ともう1人の僕の目の前に来た。
「ねえ。なんで逃げるの?」
 死神の正体は彼だ。僕はなぜか知っていた。彼が居たから、僕には恐怖がなかったのだ。
「離してくれ」
 もう1人の手を、手首から離し、男児の僕に歩む。
「馬鹿!」
「いいから!」
 止めるもう1人。僕は構わず近づく。
「ねえ。リーナは死んじゃったんでしょ?」
 今より少し高い声で首を傾げて聞いてきた。唇からは血が出ていて、服はボロボロ。僕は膝をつき、目線を合わせた。
「ああ。死んだ。リーナは…僕のせいで」
「知ってる。でも殺したのはクロノスだ。だからクロノスを殺そう」
 僕は首を振った。
「いいや。それは違う」
「どうして?」
「君にはお礼を言わないとね。今まで僕を助けてくれてありがとう」
 僕は彼を抱擁した。
「どういたしまして?」
「いつも、僕の隣に居てくれてありがとう」
「それはリーナが居たからだよ。ねえ。体を変わってくれないかな?僕はクロノスを殺す。そしてついでにシャルラッハートとか言う、僕を作り出した原因を殺す。それでいいだろ?」
「いや。すべて僕に任せてくれ。僕は君に頼りすぎた。だから今度は僕がなんとかする番だ」
 すると男児の僕は僕の腕を噛み千切った。
「嫌だ!僕は殺す!リナを奪ったお母さんも、お父さんも、それの元凶であるシャルラッハートも、リーナを殺したクロノスも!」
 僕は痛みをこらえて少年の僕に告げた。
「君だけでか?それは無理だ。
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