英雄
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国軍がやって来る。捕まれば劣悪な環境の流刑地に送られ再教育される。そんな噂で人々はパニック寸前だった。
八つ当たりに近い声にヤンは飄々としていた。
「大丈夫ですよ。リンチ司令官が囮になってくれましたから。上手く行けば帝国軍が追い付く前に、駆け付けてくる味方の第4艦隊と合流できるでしょう」
「き、君は味方を囮にしたのか!」
自分が死ぬよりはましでしょう、と答えられ絶句する。
リンチとの戦いに釣り上げられた帝国軍はまんまとエル・ファシルの市民を取り逃がした訳だが、武人として勇士を遇する心意気は持っていた。
警備隊の犠牲によって生還したヤンは、300万人の市民を救出した事で英雄となった。しかしリンチは民間人を見棄て逃げ出した挙げ句に投降したと汚名を着せられた。敗北を華々しい美談で掻き消す為だ。
この件には政治家と軍高官の思惑が一致した結果だった。エル・ファシルの真実は口外しないようにと圧力がかかった。
飴と鞭で、コリアンは口封じとして中佐の昇進と第8艦隊幕僚の椅子を与えられた。
「不満は無いだろう?」
人事担当者そう言われてコリアンは殴りたい気持ちを圧し殺し、礼を述べるに留めた。
「御配慮に感謝いたします」
艦隊司令部だ。栄転と言える。
(このままでは済まさない)
コリアンの黒い瞳に決意の光が宿っていた。
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