暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
無限不調和なカンタータ 6
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「ふわわぁ〜〜……。可愛いぃ〜〜」

 薄い桃色が混じる、白金色の体毛を持った小鳥。
 それを両手のひらに乗せて間抜けな歓声を上げたのは。
 改めて言うまでもなく、もちろんカールだ。

『堕天の協力には感謝するが、何故お前達と行動を共にせねばならぬのだ』
(くちばし)がパクパク動いてるのに、耳奥で聴こえてるのはちゃんとした人間の言葉だなんて。不思議だねぇ」
『話を聴け』

 私は、森の中でも比較的長寿と思しき大木の枝に背中を預けて寝転がり。
 まったく噛み合わない会話を横目に、くわぁーあと欠伸(あくび)を一つ。
 今朝も、葉っぱの波に揺れる空が青い。

「良いんじゃないかなあ。皆で一緒に居るのも楽しいよ? メレテーさんが見てた世界も、この姿でなら思う存分体験できるだろうし」
『それは、そうかも知れないが』

 きゅる? と、首を傾けながらカールを見上げるアオイデー。
 肉団子から人型に戻った女神は今や、外見も鳴き声も小鳥そのものだ。
 『音』を使って会話しなければ、白っぽいカナリヤか何かでしかない。

「グリディナさんて、すごいよね。こんなこともできちゃうなんて」

 ふふん。
 そうよ。
 この私が、わざわざ、『音』の力で変容させてやった温情。
 ありがたく思うが良い。

 極端に力を抑えたその姿なら、天上世界に居る神々には見つけにくいし。
 仮に見つかったとしても、悪魔の力で変容させてるからね。帰りたくても帰れなかったんだろうってことで、即刻殺される心配もまずない。
 ついでに、カールが一緒に居れば人間の狩りからも護れる。
 私にしちゃ破格の厚待遇なんだから。
 感謝はされても、文句を言われる筋合いはないわ。

 決してっ!
 思い出話に付き合ってやってた一晩中、木を挟んで背中合わせに隠してた()()()()()()()()()そわそわするカールに苛ついたからじゃないわよ?
 ええ、決して!

『業腹ではあるが、グリディナの力は、私よりも格段に優れているからな。音を物質的圧力と捉えている私とは違い、構成の一部として配列に干渉……つまり一定方向に連鎖する『音』ではなく、『言霊』の性質に近いんだ』
「『言霊(ことだま)』?」
『魂の概念は知っているか? 幽霊やら霊魂と言い換えても良い』
「それなら……死んだ人の思念、とか?」
『そんなものだな。厳密に言う魂とは、目に見えぬ空気よりも、更に小さな物質の集合体、その大部分を指す』
「空気よりも小さな物質? 空気って、大きい小さいで表現する物なの?」
『空気が物質でなければ、木の枝葉や草花を揺らす風は何だというんだ? 現象とは、物質があってこそ成り立つ結果だぞ』

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ