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逆さの砂時計
Side Story
無限不調和なカンタータ 6
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えてくれたほうがスッキリするわ!
 『お前は本当に変な奴だな。自分で襲っておいてなんだが、私達の事情にお前は関係無かったんだ。もう危害を加えたりはしないし、私に気を配る必要も無いんだぞ?』
 「わっわっ……」
 小さな翼を広げて両手から飛び立ち、カールの前頭部より少し上にちょこんと乗っかる小鳥。
 覗き込まれて落ちそうになるのが怖いのか、目だけで見上げる男のなんて情けない顔。空になった両手があたふたと宙を泳いでる。
 ……鳥に遊ばれるんじゃないわよ、ったく。
 「んと、でもね。僕は皆で楽しそうにしてるほうが良いから。辛い事や悲しい事があるのはどうしようもないけど、それも踏まえて楽しく生きられたら良いなって。何かの力になれる訳でもないのに、無責任かな?」
 「カぁあールぅ? 早くも昨日の言葉を忘れたのかしらぁ?」
 卑下は私への喧嘩叩き売りと受け取るわよ、と半眼で睨み付ければ
 「ううん。でも、僕を必要としてくれたのはグリディナさん一人だし。僕には歌しかないけど、それだけじゃ変えられない物事がいっぱいあるでしょう? そういう意味」
 意外に冷静な返しで来たわね。ちょっと驚いた。
 『敵を無力化するという点に於いては、お前ほど有力な者もなかなか存在しないのだがな』
 「そうなの?」
 『大抵の悪意は心体問わず何処かしらの歪みから生じるが、お前の歌はあらゆる歪みを正すもの。戦意喪失にはこの上無い武器だぞ』
 アンタもそれにやられたんだものね。すっごい説得力。
 「その割りには僕、グリディナさんを怒鳴らせてばかりいるような」
 『あれは標準装備だ。基本、悪魔は論戦に耐えうる頭脳を持たない代わりに威嚇で虚勢を張る』
 「よし。アンタを丸焼きにしてカールの昼飯にしよう。」
 枝から降り立ちペキペキと手を鳴らす私に、生意気な小鳥はぴぴぴぴぴっと、けたたましい声を上げた。笑ってるらしい。
 腹っ立つーッ!
 『な? 理論立てて正当性を主張する前に、暴力で結果を押し付けるだろう? だが、気に入らないからと怒鳴ったり威嚇しても、殺意は本物じゃない。間違い無くカールの力だよ』
 この野郎、解ったような口を!
 本気で?いでやろうか、その翼ッ!
 『今の私ではまともに聴けないが、お前が歌えば万物が安らぐ。グリディナも狂った音に頭を抱えなくて済むから、お前を傍に置こうとしているのだろう。音使いにとって雑音は猛毒に等しいしな』
 「雑音?」
 『創造神の手を離れたおかげで、徐々にではあるが、生物達の有り様……歪みが酷くなっている。今の世界は雑音だらけで、音の理解者には発狂ものだぞ』
 アンタも雑音の一部だったけどね!
 「ああ、それで僕が必要だって……」
 「そうよ……なに?」
 隣に立った私をじっと見下ろす二つのハチミツ玉。

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