Side Story
無限不調和なカンタータ 6
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》?
なんか、微妙に曖昧?
「もしかしてアンタ、死際に聴こえる音が拾えてない?」
『死際に聴こえる音? 何の話だ』
カールの手のひらの上で、ちょんちょんと軽く跳ね。
上半身を起こした私に向き直る小鳥。
小さな瞳がきょとんと瞬く。
やっぱり、アオイデーにはあれが聴こえてないんだわ。
てことはコイツ、組成を理解してるってだけで、物質の個の存在自体は、音としてさえ確かには掴めてないのね。
なんとなーく、あるような無いような? 程度に感じてるくらいか。
ふぅーん。
いや、別に心地好い音でもないし、聴こえて嬉しいものでもないけどさ。
神にも無い力とか、ちょっと優越感。
「……じゃあ、魂の消滅とか、死ぬって言い方は、微妙におかしくない? 単に、大きな塊がバラバラに散って物凄く細かくなるってだけだよね? 消えていくんじゃなくて、見えなくなるだけ、ってことでしょう?」
その表現は身もフタも無いわよ、カール。
『お前は、爪の先で摘むのも難しいほどの小さな砂粒を、岩石と呼ぶか?』
「言わない」
『要はそういうことだ。体を得た集合体の多くは、散り散りになった瞬間、個に戻る。そして世界中に散っている他の物質と混ざり、分散し、まったく同じ集合体の形成は二度とない』
「二度と……」
『それにさっきも言ったが、物質は一つ一つが生命力と意思を持っている。つまり全生物の生体活動や物質同士の反発と衝突でも確実に損傷を蓄積し、やがて消える。悪魔に喰われるまでもなく、生命体としての終わりを迎えた魂、心、存在は、確かにその時点で消滅、死ぬんだ。そうでないなら、誰も死を悼んだりしない』
悪魔がエサとして喰らう魂の正体。
それは、濃い生命力と意思のようなものを併せ持った、目に映らないほど小さな物質の集まり。
物質は、ただそこに在るだけで損傷を蓄積し、方向性も乱れていく。
となると、処女や童貞の魂や生命力が極上の栄養になるのは、性交による物質の衝突と反発での大きな欠損や乱れが無いから?
気流の方向性と密度の純度に関係してるのかしら。
「んぬー。君自身も見えてないっぽいのに、どうしてそんなに詳しいの? 神様だから?」
『さあな。神々が一様に理解してるのかと尋かれればそれは違うらしいが、ならば何故私が詳しいのかと問われても困る。気付けば既に知っていたし、実際にそう感じるから、としか答えようがない』
いちいち体の向きを変えるのが面倒になったのか。
アオイデーは顔だけでカールに振り返った。
「あら。神にもあるのね、そういう感覚。私もたまにあるわよ? なんでか分からないけど知ってる、ってヤツ。
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