暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
無限不調和なカンタータ 6
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から滞って緩やかに腐り、実体の致命的な損傷は気流の方向性を阻害し、散逸させる』
 散逸?
 ……あ。そうか! だから死際に「ザザーッ」って音が聴こえるのか!
 あれは、魂を形成していた物質の一部が器から溢れ出る音だったのね。
 音特性の私だって、実際には空気の構成を目で捉えてるわけじゃない。あくまでも耳と肌と周囲の変化で動きを感じるだけ。その空気よりも小さい物質の個なんて、尚更見える筈がない。
 悪魔の目に映る魂。人間がごく希に見る、生前の強い意思の具現。それは集合体としての密度と構成の質に関係してたのか。なるほど……って……
 神に教えられるとか、屈辱過ぎるーッ!
 答えが解ってすっきりしたけど、苛々度は急上昇よ、チクショウ!
 『言霊は魂を支配する力と称されるが、実態は「物質の個々に方向転換を働きかける力」。私が無理矢理器を崩したのとは違い、グリディナは振動で作る波と同じ原理を使って、より微細な物質を巧みに誘導し、実体の構造に自主変化を促させているのだろう。間違い無く群を抜いた力量だが、此処まで来ると果たして本当に音特性と呼べるのか……甚だ疑問だ』
 ……ん? 「だろう」?
 なんか微妙に曖昧……
 「もしかしてアンタ、死際に聴こえる音が拾えてない?」
 『死際の音? 何の話だ』
 カールの手のひらでちょんちょんと軽く跳ね、上半身を起こした私に向き直る小鳥。小さな瞳がきょとんと瞬く。
 やっぱり、アオイデーにはあれが聴こえてないんだわ。
 て事はコイツ、組成を理解してるってだけで、物質の個の存在自体は音としてさえ確かには掴めてないのね。なんとなーく有るような無いような程度に感じるくらいか。
 ふぅーん。
 いや、別に心地好い音でもないし聴こえて嬉しいものでもないけど……神にも無い力とか、ちょっと優越感。
 「じゃあ、魂の消滅とか死ぬって言い方は微妙におかしくない? 単に塊が物凄く細かくなるだけだよね?」
 その表現は身も蓋もないわよ、カール。
 『お前は、爪先でも持てない砂粒を岩と呼ぶか?』
 「……言わない」
 『そういう事だ。実体を得た集合体の多くは、散り散りになった瞬間個に戻る。そして世界中に散っている物質と混ざり、分散し、全く同じ集合体の形成は二度と無い。それにさっきも言ったが、物質は個別に生命力を持っている。つまり、全生物の生体活動や物質同士の反発と衝突でも確実に損傷を蓄積し、いずれは消える。悪魔に喰われるまでもなく、生命体として終わりを迎えた魂、心、存在は、確かにその時点で消滅……死ぬんだ。そうでないなら、誰も死を悼んだりしない』
 悪魔が餌として喰らう魂の正体は、濃い生命力を持つ目に映らないほど小さな物質の集まり。
 他者と交わった経験が無い者の魂が極上の栄養になるのは、性交による物質の衝突と
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