第十二話 改革の芽
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済も回復の兆しを見せ始めました」
エドゥアール王とは、別の声が聞こえた。
執務室にはもう一人、聖職者のよく着るような法衣を纏った痩せた男が執務の補佐をしていた。
「マザリ−ニよ、あれだけの人材、どうやって集めたかは知らないし問うつもりも無いが、予算を出したからには結果を出しくれなければ困る」
と、エドゥアール王は、何処か突き放したような言い草だったが、嬉しさを隠し切れないのか口元が緩んでいた。
マザリーニと言われた男は、そんな、エドゥアール王を見てぎこちなく微笑む。
マザリーニはロマリア出身の僧侶で、その見識の高さをエドゥアール王に見込まれ、秘書兼相談役としてその手腕を振るっている。
エドゥアール王とマザリーニは、歳が近い事と外国人でありながらトリステイン王国のために骨身を削ってきた事から、お互い共感を持ち、身分を越えた友情を築いていた。
「ともかく、この四輪作法を我が直轄地でも実行できるように対応してくれ。マザリーニ」
「御意」
マザリーニは深々と頭を下げた。
「しかし……な、ふふ」
エドゥアール王は笑い出す。
「陛下? いかがいたしましたか?」
「いやな、マザリーニ。まさかこういう形で、改革の芽が出てくるとは思わなくてな……ふふ」
エドゥアール王は笑いを噛み殺しながら言った。
彼自身、何度も改革を行おうとしたが、その度にトリステイン貴族たちの妨害で頓挫してきたのだ。
しかし、感情的になってトリステイン貴族と対立して、内乱を起こさせる訳にも行かない
エドゥアール王にとって我慢の日々が続き、その為か、即位した頃より痩せてしまった。
「まさか、息子のおかげとはな」
「マクシミリアン殿下の事はいかがいたしましょう?」
「好きにやらせよう。我々は貴族たちの妨害がマクシミリアンに及ばないようにするのだ」
「御意」
……エドゥアール王は思う。
かつて憧れだった養父フィリップ3世。その亡霊とも言うべき守旧派……と、言われるトリステイン貴族の一派。
『古き良きトリステイン』を、守る為に活動する彼らにとって、マクシミリアンの改革は面白いはずは無い。
(必ず、何らかの動きを見せる)
と、そう思っていた。
エドゥアール王は、そういった貴族たちを監視し押さえつける事でトリステイン王国を治めてきた。
アルビオン王子エドワードからトリステイン王エドゥアール1世に成って十数年経つ。
今まで、多くのトリステイン貴族とやり合って、身も心もボロボロだが。
「報われる時がきた」
と、呟く。
「陛下? いかがなさいました?」
「いやな、我々の努力が報われる日が来ようとは……な」
エドゥアール王の言葉にマザリーニも神妙に頷いた。
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